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農医連携教育研究センター 研究ブランディング事業

28号

情報:農と環境と医療28号

2007/7/1
食料?農業?農村白書?21世紀にふさわしい戦略産業を目指して?平成19年版が刊行された
平成19年版の「食料?農業?農村白書」が刊行された。白書には、新たな基本計画に基づく主要な施策と、取り組んできた課題や状況が、国民の関心が高まるよう記述されている。今年の白書は、食料?農業?農村の現状や、未来を積極的に切り拓いていくための政策がわかりやすく解説されている。

白書の紹介に入る前に、白書に記載された博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の農医連携に関わる事例を原文のまま紹介しよう。175pに枠入で写真と共に紹介されている。
大学と市が連携し、薬草による農業?環境?医療への意識啓発と地域農業振興を図る取組
 
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@は、農医連携の理念のもとに、神奈川県相模原市と提携して、遊休農地を活用した薬用植物園の指導を行っている。ここでは、市民向けの薬草栽培体験、講 習、相談対応、シンポジウム等による薬用栽培の啓発?普及を行うほか、研究成果を応用した栽培技術や加工?流通システムの開発など、新たなビジネスモデルの創 出に取り組んでいる。大学で生まれた技術や知見を応用した活動を通じ、市民の地域農業への関心や「農業?環境?医療」の連携への意識が高まり、地域農業の振興 に成果が期待される。
「序章」では、この白書が国内外の動きを踏まえ「食料分野」、「農業分野」および「農村分野」に力点をおいて書かれたことが紹介される。

「トピックス」では、4つの項目がカラフルな資料で紹介される。まず「食料自給率向上の意義と効果」と題して、わが国の食料自給率の現状と自給率向上に向けた取組が食事のメニューを例に紹介される。

次の「担い手への施策の集中化?重点化」では、わが国の農地の現状と農業従事者の現実が解説され、担い手の育成?確保の推進策が紹介される。

「農業?農村の新境地の開拓」の"バイオマスの利用の加速化と地球環境対策"では、国内外のバイオマス燃料の現状が紹介され、温室効果ガス排出量の対応や生物多様性保全の重要性が語られる。"農産物の輸出促進"では、海外への農産物輸出の動向や日本食レストランの普及などが紹介される。

最後の「農村地域の活性化」の"農業の多面的機能と農村資源の保全?活用"では、多面的機能の解説と多面的機能を活用するための取組が紹介される。また"都市と農村の共生?対流"では、さまざまな形態が解説され、若者や団塊世代の農村への定住ニーズ、グリーン?ツーリズムなどの具体例が紹介される。さらに、効率的な農業経営や地域住民によるむらづくりなどの先進的な事例が紹介されると共に、平成18年度内閣総理大臣賞受賞者の紹介もある。

第1部の第I章は「食料自給率の向上と食料の安全供給」である。わが国の食糧自給率は現在40%で、主要先進国の中では最低水準にある。このような状況の中で、ここでは食糧自給率向上に取り組む意義と課題や食糧供給力を強化する必要性が整理されている。加えて、日本型食生活の実現、食品産業の活性化に向けた取組も整理されている。

第II章は「農業の体質強化と新境地の開拓」である。わが国の農業は、就業者の減少、高齢化、耕作放棄地の増加などの課題を抱えている。このような状況下で、農業経営の体質強化、安全な食料供給が求められている。この章では、これらの問題点の取組が紹介される。

第III章は「農村地域の活性化と共生?対流の促進」である。農村地域は、人口の自然減や流出、高齢化により農業集落の活動に影響が及んでいる。そのため、地域資源の保全管理が困難になり、野生鳥獣の被害が深刻化している。この章では、これらの対策が語られる。また、都市と農村の共生?対流について現在行われている取組が紹介される。

また、随所に事例やコラムが挟まれ読みやすく工夫されている。

第2部は平成18年度食料?農業?農村施策である。概説、食料自給率向上に向けた消費及び生産に関する施策、食料の安全供給の確保に関する施策、農業の持続的な発展に関する施策、農村の振興に関する施策、国際交渉への取組、団体の再編整備に関する施策、食料?農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための取組、から構成されている。
全国大学附属農場協議会?日本学術会議農学基礎委員会農学分科会合同シンポジウム:「食育の現状と大学附属農場等の果たすべき役割」が開催された
文部科学省は、そのホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/index.htm)で、食育の推進について次のように要約している。

食育基本法(平成17年7月施行)では、子どもたちに対する食育を特に重視し、教育関係者が積極的に子どもの食育を推進するよう努めることとともに、国及び地方公共団体が学校における食育の推進のための各種施策に取り組むことを求めています。

同法に基づき、政府の食育推進会議において決定された「食育推進基本計画」(平成18年3月31日決定)では、学校における食育の推進の中での栄養教諭の中核的な役割を重視し、栄養教諭の全都道府県における早期の配置による指導体制の充実や食に関する指導に係る全体的な計画に基づく各学校での指導内容の充実等を掲げています。

文部科学省では、同計画を踏まえて、栄養教諭制度の円滑な実施をはじめ、食育推進交流シンポジウムの開催、食生活学習教材の作成?配付や学校給食における地場産物の活用の推進などの取組を通じて、学校における食育の推進に積極的に取り組んでいるところです。

これを受けて全国大学附属農場協議会と日本学術会議農学基礎委員会農学分科会は、「食育の現状と大学附属農場等の果たすべき役割」と題して、平成19年5月11日に日本学術会議で合同シンポジウムを開催した。その内容は以下の通りである。
趣旨説明:大杉 立(東京大学大学院教授)
基調報告:「食育のすすめ"大切なものを失った日本人"」 服部幸應(服部栄養専門学校校長)
基調報告:「民間企業における食育の取り組み」 松本幹治(雪印乳業株式会社課長)
基調報告:「大学附属農場協議会としての取り組み」 萬田富治(博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@教授)
一般報告:「ユーカルチャーデイ」および「おいしい朝食成績アップ事業」 本杉日野(京都府立大学准教授)
一般講演:「芸術文化を取り組んだ先導的な食育と地域農産物のブランド化」 中司 敬(九州大学農学部教授)
一般講演:「東北大学フィールドセンターにおける食育活動と今後の在り方」 三枝正彦(豊橋技術科学大学先端農業?バイオリサーチセンター特任教授)
一般講演:「農作業の体験学習を通して育てる食育と大学との連携を考える」  高橋 均(東京大学教育学部附属中等教育学校教諭)
パネルディスカッション:司会 森田茂紀(東京大学大学院教授)
平成19年度博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@研究集会の開催:第20回「遺伝子とその周辺」
平成19年度博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@研究集会第20回「遺伝子とその周辺」が計画されている。趣旨と開催要領は次の通りである。

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@では"人間の生命と健康に関する分野"、"動植物と環境に関する分野"、そして"生命科学の基礎的研究を行う分野"において、それぞれ生命科学領域の教育?研究を実践している。対象とする生物は五界を網羅しており多様性に富む。これらに関わる教員?学生が一堂に会して研究発表を行い、相互理解を深める、さらに学部?研究所を越えた連携を強化し、本学における生命科学研究の発展を図ることが望まれる。

「遺伝子とその周辺」研究集会は、昭和60年に組換えDNA実験安全委員会(現博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@遺伝子組換え実験安全委員会)の主催のもと、医学部において最初に開かれた。平成19年度には第20回目を迎える。平成18年度からは博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の常置研究集会として位置付けられた。年度ごとに本学を構成する7学部が輪番で研究集会を開いてきた。平成19年度開催に係る企画?準備等は水産学部が当番学部となる。

本研究集会は全北里グループで展開されている研究のなかでも、遺伝子を扱う生命科学分野に焦点を充て、研究を発表し討論を行う。若い教員や大学院生の参加が多く、学術上の興味や問題点を共有し、技術的な問題も含めて互いに助け合い問題解決のヒントを得る場所としての特徴をもっている。

このような研究集会の趣旨が教員や学生の意識に定着するに伴って、学部間の垣根を越えた北里グループ全体の研究集会として育ってきた。この研究集会を機会として、共同研究がスタートした例や技術的な問題解決がなされた例も多数あり、学術上の意義は極めて重要である。

集会代表:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@水産学部 高橋明義
研究集会:第20回「遺伝子とその周辺」研究会
開催期間:平成19年8月9日~平成19年8月10日
開催場所:岩手県大船渡市(大船渡プラザホテル)
平成19年度博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@研究集会の開催:第5回「北里化学シンポジウム」
平成19年度博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@研究集会第5回「北里化学シンポジウム」が計画されている。趣旨と開催要領は次の通りである。

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@は、北里柴三郎博士が設立された北里研究所を母体とし、生命科学の総合大学としての特色を持って発展している。化学の分野においても、北里研究所、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の多くの部署において多岐にわたる広範な研究が行われている。しかし、個々の研究者間での交流は必ずしも十分といえる状態ではないというのが実情であった。

各学部間、研究室間の研究情報交換を行なうためのシンポジウムを開催することは、本学における化学研究を発展させる上で極めて有意義であると考えられ、平成11年度に第1回北里有機化学シンポジウムが開催された。以降、隔年で開催され、平成15年度はさらに分野を広げ、「北里化学シンポジウム」へと発展し、平成17年度も同様のシンポジウムが開催された。各回とも150名以上の参加者により有意義なシンポジウムが行なわれた。平成19年度も引き続き第5回北里化学シンポジウムとして開催したい。

本シンポジウムは、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の心理を探求する精神にかんがみ、オール北里の研究者が一堂に会し、元素、分子から生命現象まで、化学を基盤とする研究の成果を発表し合い、討論することにより、相互理解を深め、自己の研究を別の側面から見直す契機とすることによって、研究の一層の発展、活性化を図ることを目的とする。また、第一線で活躍している研究者を国内外から招聘して、講演、討論の機会を得ることは、今後の研究活動にとって極めて有意義であるといえる。

集会代表:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@薬学部 長瀬 博
研究集会:第5回北里化学シンポジウム「基礎化学とその展開」
開催期間:平成19年11月21日
開催場所:薬学部コンベンションホール
第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの内容:鳥インフルエンザ (7)新型インフルエンザの脅威?鳥のインフルエンザとヒトへの影響?
平成19年3月9日に開催された第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムのうち、演題「新型インフルエンザの脅威"鳥のインフルエンザとヒトへの影響"」を紹介する。

新型インフルエンザの脅威"鳥のインフルエンザとヒトへの影響"

国立感染症研究所感染症情報センター長 岡部信彦

「インフルエンザ」というのはヒトの病気としてよく知られている。その原因は、インフルエンザウイルスの感染によるものである。インフルエンザウイルスには、A型B型C型の3種類があり、B型C型インフルエンザウイルスはヒトだけの病気である。しかしA型インフルエンザウイルスには多くの異なった型(現在144種類のA型インフルエンザが判明している。正式には亜型-subtype-という)があり、現在ヒトはこのうちの2種類のA型インフルエンザウイルスにしか感染しない。その他のインフルエンザウイルスは、鳥類などを中心として、多くの動物に感染しているのである。

ヒトのインフルエンザウイルス
A型インフルエンザウイルスは遺伝的に不安定なウイルスで、ヒトの間で現在流行しているA型H3N2、A型H1N1というタイプの中で、小さな変化を続けている。これを連続抗原変異(antigenic drift)という。ウイルスが変化して目先が変わると、以前にインフルエンザにかかった人でも、少し新しくなったインフルエンザウイルスには再びかかることになる。

ヒトのA型インフルエンザウイルスは、同じタイプが何10年も何百年も続いているのではなく、これまでに数年から数10年単位で突然別のタイプに取って代わっている。H3N2やH1N1という中での小さな変化ではなく、新たなタイプの登場となる。これを不連続抗原変異(antigenic shift)という。いわばインフルエンザウイルスのフルモデルチェンジで、人類にとって新型インフルエンザウイルスの登場となる。新たな登場なのでこれに対する免疫を持っている人はなく、一時的に相当規模の流行になる。

過去では1918年に大規模な流行で始まったスペイン型インフルエンザウイルス(H1N1)はその後普通のインフルエンザとしてヒト社会に定着して39年間続き、1957年からこれに置き換わったアジア型インフルエンザウイルス(H2N2)の流行は同じく定着して11年続いた。1968年にはアジア型に置き換わって香港型(H3N2) が新型インフルエンザとして現われ、ついで1977年ソ連型 (H1N1)が加わり、小変異を続けながら普通のインフルエンザとして現在に至っている。

鳥のインフルエンザウイルス
鳥類はA型インフルエンザウイルスに感染する代表的な動物である。鳥のインフルエンザウイルスとヒトのインフルエンザウイルスは、同じA型インフルエンザウイルスであるが、その遺伝子構造にわずかな違いがある。さらに鳥のインフルエンザウイルスは人と違って主に腸管で増え、糞便中に大量のウイルスを排泄する。

鳥類もいろいろで、カモなどの水禽類は、A型インフルエンザウイルスのすべてのタイプ(144種類)に感染するが、症状が出ない。ウイルスの感染を受けた渡り鳥のカモは、元気に世界を飛び回って各地でウイルスを便と共に排泄するので、インフルエンザウイルスの拡散の起源はカモではないかと言われている。

カモから排泄されたインフルエンザウイルスの一部は、水辺や餌場などで鶏やアヒル等の家禽に感染する。殆どの鶏やアヒルも無症状か軽症であるが(低病原性鳥インフルエンザウイルス)、一部のタイプ(H5、H7などと分類されるタイプ"高病原性鳥インフルエンザウイルス")は鶏に対して非常に高い病原性があり、ことにH5N1という種類のA型インフルエンザウイルスの病原性は激しく、感染した鶏の殆どが短時間のうちに死亡する。

鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染
鳥のインフルエンザウイルスが人に直接入り込んでくることはないと長い間考えられていたが、1997年香港におけるインフルエンザウイルスH5N1の鳥の間での流行時に、6名の死亡を含む18名の患者発生が初めて確認された。

香港政府は感染源となる鶏類150万羽を処分し、以降しばらく鳥インフルエンザの人への影響は落ち着いていたが、2003年オランダでのH7N7型インフルエンザウイルスの鳥の間での流行では、約100名の人の発病者(殆どが結膜炎)と、1名の死亡が確認されている。2005年茨城県でH5N2型の鳥インフルエンザウイルスの流行があったが、この時には人での発病者はなかった。

鳥インフルエンザウイルスH5N1が直接に人に感染した場合には、人も重症になる(致死率約60%)。しかし感染は容易に起こるものではなく、これまでのところ発病者のほとんどは病気になったあるいは死亡した鳥と近い距離での密接な接触があった限られた人たちで、患者が入院した病院内での感染の広がりや、地域での人から人への感染の広がり、食品としての鳥類からの感染などはない。つまり例えばわが国のようなところで普通の生活をしている多くの人にとって、「元気な鳥を見ているだけでも鳥インフルエンザが心配」、という状況ではない。

新型インフルエンザ発生への懸念
先に述べたように、1918年に始まったスペイン型インフルエンザウイルス(H1N1)はその後39年間、1957年からこれに置き換わったアジア型インフルエンザウイルス(H2N2)の流行は11年間続いた。1968年に香港型(H3N2) が現われ、ついで1977年ソ連型 (H1N1)が加わり、今に至っているが、現在のインフルエンザA型(H3N2)香港型はすでに40年近く、A型(H1N1)ソ連型は1977年以来30年近く、その中で少しずつ変化をしながらも同じA型インフルエンザウイルスの流行が続いていることになる。

これまでのインフルエンザの変化の歴史を見れば、現在はいつA型インフルエンザのフルモデルチェンジがおこり、新型インフルエンザが登場してもおかしくない状況にあるといえるが、しかしこれが、来年なのか、5年先なのかの予測は誰も科学的に正確な答を持っていない。

しかしこれまでと異なった新しいインフルエンザウイルスが出現すれば、人々はこの新しいウイルスに対する免疫がないので、地球規模での大流行(パンデミック)になることが危惧されている。医療医学が進歩している一方、交通の発達、人口の増加?集中、生活様式などは過去の大流行時とは比べようもない著しい変化を遂げており、新型ウイルスが出現した際にはこれまでにないスピードで広がり、大規模な流行となり、それに伴う健康被害の増大、そして社会生活への大きな影響がもたらされることが懸念されているところである。新型インフルエンザの出現は、
1) 鳥インフルエンザウイルスの遺伝子が突然変異し、人に感染し易いタイプに変化する 
1) 鳥インフルエンザウイルスとヒトのインフルエンザウイルスとがブタや人の体内で同時に感染し(ブタはヒトのインフルエンザと鳥のインフルエンザの感染を受けることがある)、鳥とヒトのインフルエンザウイルスの遺伝子が混ざり合う(遺伝子の交雑)ことによって、ヒトにとって新しい組み合わせのウイルスが出現する、といった説が考えられている。つまり鳥の間で鳥インフルエンザウイルスの大流行がおこり、少数でありまた偶然に生ずる感染とはいえヒトでの感染例が増えているということは、新型インフルエンザに変化するリスクも高まっている、と考えられている。

現在、世界的に新型インフルエンザ出現が最も懸念されるのは、鶏などにとっての被害が高まるH5N1ウイルスに由来することであるが、いつのまにかブタを経由して発生する可能性が消え去っているわけではなく、ブタのインフルエンザの監視も引き続き行われている。

鳥インフルエンザ、新型インフルエンザへの対策と備え
新型インフルエンザの登場について、「ないだろう」と思いこんでしまうことはあまりにも楽観的である。とはいえこれを「完全に阻止しよう」と考えることは今の人間の持っている力では無理である。自然界の流れとして受け入れるべき事柄と思う。しかし大地震や大火事への対策と同様で、流行の規模を少しでも小さくし、健康の被害や社会の混乱をその時点で最少にする備えが必要であろう。

「新型インフルエンザが来るかも?????」と長い間言っていると「イソップの狼少年のようだ」と囁かれることもある。しかし、この備えは新型インフルエンザだけの対策に留まるわけではない。たとえば再びSARSのように新たな疾患が出現したときにも十分応用できるもので、既存の多くの感染症、未知の感染症全体への備え、対策として重要なことである。
第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの内容:鳥インフルエンザ(8)高病原性鳥インフルエンザとワクチン
平成19年3月9日に開催された第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムのうち、演題「高病原性鳥インフルエンザとワクチン」を紹介する。

高病原性鳥インフルエンザとワクチン対策
 
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@附属北里生命科学研究所副所長?ウイルス感染制御教授 中山 哲夫

1997年に香港で18例がH5N1に感染し6例が死亡し、ニワトリのインフルエンザが宿主を越えてヒトに感染したことがあきらかとなりニワトリを廃棄することで流行の拡大は阻止された。その後、H5N1は中国、東南アジアを中心にカモからアヒル、ガチョウ等の水鳥に感染が拡大しさらにはウズラ、ニワトリの家禽に感染し、野鳥への感染によりその流行は中近東、更にヨーロッパにまで拡大し世界的な問題に発展してきた。

2003年以来、ベトナム、タイでヒトへの感染が報告され感染例が増加し最近までに270例近くが感染し50%以上の高い死亡率を示している。ヒト"ヒト感染が疑われる例も報告されているが家族内感染例で同じ生活環境であることから、ヒト"ヒト感染を強く支持する報告はない。

我が国にも、2004年には京都、山口、大分の養鶏場でニワトリが斃死し、2006年には宮崎、岡山の養鶏場で感染が報告され、ヒトへの感染が危惧される。抗インフルエンザ剤が開発されてはいるが予防薬としてのワクチン開発はインフルエンザ対策の基本となる。

インフルエンザワクチンは受精卵を用いて製造され、A/H1, A/H3, Bの各株あたり15μg HA蛋白を含有している。高病原性トリインフルエンザは受精卵を殺し製造は困難である事から、遺伝子組換え技術を用いてHA蛋白の病原性に関わる遺伝子領域を改変?弱毒化しさらに、HA, NA以外の遺伝子は卵で増殖する遺伝子との組換えウイルスをワクチンシードとしてプロトタイプの高病原性トリインフルエンザワクチンを各社製造しPhase I studyが終了した。

全粒子不活化+アラムアジュバントを添加した製剤で1.7, 5, 15 μg HA/dose、皮下接種?筋注2回接種群の6群各20例を対象に各社が治験をおこなった。皮下接種群では局所反応が強いが全身所見は現行ワクチンと同等と考えられ、5μg以上で免疫原性を確認できた。Phase Iの結果に基づき、先行3社でPhase II/III studyが実施された。5, 15 μg HA/dose、皮下接種?筋注群の4群、計900例の臨床試験が行われ、EU諸国で不活化インフルエンザワクチンの免疫原性の有効性基準をクリアーする結果であった。

プロトタイプワクチン株のHA蛋白は2004年ベトナムで分離された株(clade 1)であったが、インフルエンザウイルスは変異が速く現在流行株はclade 2でそのなかにもsubclade 1, 2, 3に分かれ抗原性が変化しておりclade 2に由来する株を用いてパンデミックプロトタイプを製造し備蓄している。

現行インフルエンザワクチンの限界と新型インフルエンザワクチン開発の世界の現状を紹介したい。
第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの内容:鳥インフルエンザ(9)総合討論とアンケート結果
平成19年3月9日に開催された第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの講演内容は、これまで「情報:農と環境と医療 25, 26, 27, 28号」で紹介してきた。ここでは、それぞれの概要と総合討論とアンケート結果を紹介する。

シンポジウムの開催にあたり、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の柴 忠義学長の挨拶があった。そこでは、学術会議が従来の7部制から「人文科学」、「生命科学」、「理学および工学」の3領域にまとめられた話があった。今回の「鳥インフルエンザ」は、学術会議の新しい「生命科学」領域に沿ったシンポジウムであり、農と環境と医療の連携そのものであることが強調された(参照:「情報25:農と環境と医療」)。

これを受けて、まず「農と環境と医療の視点から鳥インフルエンザを追う」と題した基調講演が行われた(参照:「情報25:農と環境と医療」)。

その後、農学の立場から「動物由来ウイルス感染症の現状と問題点」と題して、動物から人へ、動物由来感染症の発生?拡大の背景、人類への警告、制圧への道筋、日本の新しい共通感染症対策が語られ、国と地方自治体の連携、農水省と厚労省の連携、そして医師と獣医師の連携の必要性が強調された。農医連携と同様に、連携はどの分野でも不可欠な活動である(参照:「情報26:農と環境と医療」)。

さらに農学の側から「高病原性インフルエンザの感染と対策」と題して、HPAIの出現、家きんにおけるGHAPAIの発生状況、HPAIの防疫対策、農が行う新型インフルエンザ対策が語られ、最後に強い国際協力の必要性が叫ばれた(参照:「情報26:農と環境と医療」)。

続いて環境の立場から「野鳥の渡りや生体と感染の発生」のタイトルで、感染発生と渡り経路との関係、野鳥の感染事例、野鳥への感染拡大要因が述べられ、ウイルスと家禽および産業動物、野鳥相互の関係を明らかにしなければならないことが強調された(参照:「情報27:農と環境と医療」)。

また環境の立場から「野鳥の感染とその現状」と題して、野生鳥類での発生、H5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルスに対する野生鳥類の感受性が語られた(参照:「情報27:農と環境と医療」)。

最後に医療の立場から2題の講演があった。最初は「新型インフルエンザの脅威"鳥のインフルエンザとヒトへの影響"」と題して、ヒトのインフルエンザ、鳥のインフルエンザ、鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染、新型インフルエンザ発生への懸念、鳥インフルエンザ?新型インフルエンザへの対策と備え、が解説された(参照:「情報28:農と環境と医療」)。

続いて「高病原性鳥インフルエンザワクチン対策」と題して、現行インフルエンザワクチンの限界と新型インフルエンザワクチン開発の世界の現状が紹介された(参照:「情報28:農と環境と医療」)。

総合討論

これらの講演が終わった後、吉川泰弘氏と陽 捷行を座長におき総合討論が行われた。総合討論は80分に及んだ。多くの興味ある質問と意見、講演者の適切な回答に会場は熱気に包まれた。いずれも農医連携の必要性を前提にした貴重な質問と意見であった。延べ15人の発言者と7人の講演者との間の質疑と討論は概ね以下のようであった。

輸入食品と安全性、病原性の制御と共生の在り方、糞による大気汚染の問題、鳥の接触に関する教育の普及、災害時対策の法と行政指導、ウイルスの環境での挙動、渡り鳥の意味づけ、などであった。これらについては、それぞれ関連する講演者に回答をいただいた。なお、質疑応答は、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ホームページの「農医連携」の「第3回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウム」でオンデマンドで観ることができる(/jp/noui/spread/symposium/sympo03.html)。

アンケート結果

総合討論を終えた後、参加者のうち89名の方からアンケートをいただいた。アンケートの内容は、1)シンポジウムの情報源、2)参加目的、3)講演内容の評価、4)興味ある演題、5)職業、6)性別、7)年齢、8)参加者の都道府県名、9)全体の感想や運営への気づき、10)農と環境と医療の連携についての考え、であった。

以下、1)から8)に沿ってその内容の概略に触れる。1)70%強が案内?散らし?ホームページによる、2)90%強が農医連携とプログラム内容、3)96%が満足?ほぼ満足、4)興味ある演題は分散、5)行政:35%、教育研究:28%、企業19%、6)男性81%、女性19%、7)20代:14%、30代:18%、40代:26%、50代:27%、60代:6%、70代:7%、80代:2%、8)東京:36%、神奈川:20%、茨城:8%、岩手:7%、青森:5%、千葉;5%。

なお、アンケートの9)および10)については、生の意見を感じていただくためにアンケートを直接紹介する。なお、原文の漢字は一部修正した。また、類似した内容の重複は避けた。

9)全体の感想や運営への気づき
  • 演題5の講演内容の焦点がわからなかった。討議時間が押してしまったので演題がやや盛りだくさん過ぎた印象です。〔30代?女〕
  • 1つの講演毎に短時間で良いので質疑応答時間があった方が良いと思います。〔40代?男〕
  • できる限りスライドのハンドアウトが欲しかった。〔40代?未記入〕
  • スムーズでとても良かった。〔40代?男〕
  • 鳥インフルエンザについて、様々な視点からとらえることができ、大変有意義なシンポジウムであったと思います。ありがとうございました。〔30代?女〕
  • 丁寧で親切な印象を受けました。大変参考になりました。ありがとうございます。〔30代?男〕
  • 大変良いシンポジウムでした。会場も便利で、お茶までいただきありがとうございました。参加者名簿もあり、帰ってからも連絡を取ることができます。〔30代?女〕
  • 多くの方の質問を伺えてよかったですが、時間に対して多くとられすぎた印象があります。もう少し絞られても良かったかも知れません。家畜保健所の方も多くいらしていたので農水省サイドの演者の方がもうお一人あっても良かったかも知れません(飼育方法、農場対応等)。〔30代?女〕
  • 感染経路等、気になる点は多々あったが、最新の情報を聞くことができたので参考になった。〔20代?男〕
  • 1つのトピックについて、様々な角度から視た講演を聴けるというのが非常に良いと思った。〔20代?男〕
  • 純粋に楽しむことができました。今後の発展を願っております。〔20代?男〕
  • 昼食案内など、親切でとても良かった。〔20代?男〕
  • 1つ1つのプログラムにもっと時間を取って欲しかった〔40代?男〕
  • ある種の飼育条件で鳥インフルエンザの発症は避けられる要素があると考えている(畜舎の環境的防除)。〔80代?男〕
  • ほぼ満足。〔60代?男〕
  • 体系的に講演プログラムが選定されており、大変有益であった。〔50代?男〕
  • 7時間にわたる充実したシンポジウムありがとうございました。各先生のお話も総合討論も非常にためになりました。〔30代?男〕
  • 総合討論が充実していました。司会の先生がたに感謝いたします。〔50代?未記入〕
  • 各演者への質問の時間を設定できればと感じた。もしくは質問票の対応など。〔50代?男〕
  • 最後の総合討論がおもしろかったです。様々な立場の方から意見が出てそれに的確に答えられていたと思います。司会の先生の配慮が良かったと思います。ありがとうございました。〔20代?男〕
  • 長時間にわたるお話、ありがとうございました。専門家の中でこれほど危機感がつのる中、医療関係に勤める友人は院内では未だ全く対応が検討されていないと申しています。今後ひろく正しい情報が浸透することを願います。〔40代?女〕
  • 対象とする観客の想定が不特定。広く呼びかけて内容も面白いが、参加者が少なくもったいない。〔50代?女〕
  • 会場も清潔で広く、快適。次の機会にも参加したい。取り上げてもらいたいテーマ「食糧自給率」「地球温暖化」「食べ物と健康」。〔50代?男〕
  • 専門家対象については現在のやり方でよいと思う。今後は高校生など若い人達への教育にいかにメスを入れるかが大切と考える。〔60代?男〕
  • 時間厳守のためか、早口発表が多く、フォローするのが大変!!本日の総合討論は多数の発言、質問があり、活発な意見交換があり良かった。〔70代?男〕
  • 一番前の席はスクリーンが見づらい。演者の席を一番前に指定するのは問題ありと思う。幅広い範囲の話が聞けて有意義であった。〔40代?男〕
  • 農業と医療の関係に興味を持っていますが、今回のシンポジウムは非常に参考になりました。ありがとうございました。〔50代?男〕
  • 大変わかりやすく有意義であった。〔50代?男〕
  • パワーポイントの画面をコピーした資料があれば良かった(説明されていた内容を画面毎に書き足すことにより、より理解が高められるため)〔40代?男〕
  • 1つの課題に対して様々な観点からの講演がされ、広く情報を入手できる意味で良い取組みだと思います。場所も長時間のスケジュールにもかかわらず疲れないため良かったです。出席者リストを見ましたが、もう少し開催を広くPRされた方が良いかとも感じました。〔30代?男〕
  • 演者が相互に連絡不十分で、重複したり誰も触れないといった落ちがあってシンポジウムのまとまりを悪くしている。例?重複は1、2の演者で多々あり、欠落はNとF1の内容の説明(つまりウイルス粒子の説明が欠けていること。ワクチンの利用が何故いけないのか。逆に茨城の病因持ち込みの検討に欠けていること)。
  • とても聞きやすく、学びやすいシンポジウムと感じました。〔30代?男〕
  • 業務に参考になる内容だった。機会があればまた参加させて頂きたい。〔40代?男〕
  • 講演の内容が専門家の先生方の平易な話しぶりで理解でき、有意義な時間でした。〔70代?男〕
  • 質問数をもう少し制限して、回答時間をとるべき。〔40代?男〕
  • 興味深い演題が多く、他の会合をキャンセルしてでも出席したいと思った。出席して良かった。〔70代?女〕
  • 司会がいまいち。照明が明るすぎる(発表時)。3点(農?環境?医療)から接点が見えない。演者同士のディスカッションがあれば良かったかなあ。〔30代?男〕
  • 医療分野でのtechnical termが多いので、参加者層は必ずしもそれら分野の人とも、また academic fieldの人ばかりでもないので、プレゼンターは少し配所して欲しい。〔50代?男〕
  • 今回のプログラム内容に対しては、時間が足りなかった(充実した内容でした)。〔40代?男〕
  • 討論の時に質問をできなかったので是非ホームページ内でお答え頂けたら嬉しいです。鳥の体温は40℃以上(43℃ぐらい)だったと思いますが、人は平均36℃ぐらいです。この温度差で定着しやすいとかしにくいとかないでしょうか。また、このウイルスは何℃から増殖しはじめるのか、増殖曲線のようなものを教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。〔20代?女〕
  • プログラムが多岐にわたり、一つ一つの時間が少し短かったように感じたが、タイムリーな話題であり質疑も活発になされて、全体としてはよかったと思う。〔40代?男〕
  • たいへん有意義。異分野の総合的討論がよかった。〔40代?男〕
  • 総合討論は一問一答にしたほうがわかりやすいと思った。〔20代?女〕
  • ありがとうございました。すばらしい運営でした。〔50代?男〕
  • 農医それぞれの立場からの講演が中心で、いまひとつ連携の具体的イメージがつかめないように思います。公開シンポジウムではありますが、セッションをもうけるなどしてやや専門的な研究内容の発表時間があってもよいのではないでしょうか。また、パネルディスカッションのようなものも考えてほしく思います。〔40代?男〕
  • 新しいサイエンスとして注目している。植物花粉アレルギーは扱えるか。〔70代?男〕

10)「農と環境と医療」の連携について、お考えがあればご記入下さい。
  • 農水と、感染(医療)、渡り鳥など切っても切れない点だけれど、今まで合わせた視点でのシンポジウムはあまりなかったのでとても勉強になりました。〔30代?女〕
  • 現在発生している事象については多面的な方向からの分析や検討が必要である。その点で今回のような連携シンポジウムは意義深い。〔40代?男〕
  • 初めてこのシンポジウムに参加しました。各専門家が重要としている部分や共通している部分があり、これらの結論をいかに一般の興味を持たない人々に対し意識させ周知させていくことが重要だと思う。〔40代?男〕
  • 大変重要な課題と思います。そもそもこれまでそれぞれの専門が独立していたのが不思議だと思いました。博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の斬新なアイデアで之からも時代を引っ張っていってください。〔30代?女〕
  • 「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@で鳥インフルエンザのシンポジウム」と伺い、十和田での開催かと思っておりました。農に限らない広い視野の方のお話を東京で学べる機会は大変ありがたいです。今後ともよいテーマをよろしくお願いいたします。〔30代?女〕
  • 鳥インフルエンザが国内で発生した場合に、いかに農業従事者の安全を確保するかは、2次3次感染を防ぐ上で必須であると考える。人の簡易診断キットも開発すべきと考える。〔20代?男〕
  • 今後人獣共通感染症の対策を立てるうえで、連携は非常に重要なものと認識している。しかし「連携が重要」とか「協力してやっていくべき」という段階の呼びかけ的な話よりも、実際に連携して動いている仕事の話、成功例などといった、少し深みのある話を聴けるとありがたい。〔20代?男〕
  • 「農と環境と医療」に「産業」を組み込んだ内容に向かって頂けると嬉しいです。〔20代?男〕
  • 作物栽培でも「農と環境と医療」の視点で連作障害、病害虫の発生を大幅に防止できると考えて「耕種防除」の手法で普及に努めている。本日のシンポジウムは大変参考になりました。お礼申し上げます。〔80代?男〕
  • 医の視点が欠けていたが、合格。〔60代?男〕
  • このような有意義な活動は是非大きく広め、多くの一般市民の方々へ情報が行きわたってほしい。〔30代?男〕
  • 異なる分野から同じ問題にどう向き合うか、意義深いテーマであると感じることができた。〔50代?男〕
  • 厚生労働省と農林水産省のような硬い関係でなく、やわらかに速やかに行動できる連携を期待します。〔40代?女〕
  • 貴大学でこのようなシンポジウムを行っていることは知りませんでした。現在農業団体に勤務していますが、農と環境からさらに医の面まで考えながら仕事に取り組みたいと思います。特に金井先生の講演が一連のシンポジウムに良い効果を与えたのではないでしょうか。〔50代?男〕
  • 花粉症は、連携によって何か解決の道筋がないものだろうか。〔50代?男〕
  • 初めて参加、この言葉も初めて知りました。人の食べ物のほとんどが生き物、人の健康には「農」が欠かせないのに今までは「農」が軽く見られていた。輸入すればいいという時代は過ぎた。安全性の面でも輸入にかかる大きなエネルギーが地球温暖化にも悪影響を与えると、もっと「農」を見直した方がいい。健康は、食と環境でもたらされることを考えると、この連携は重要な取組みだと思う。〔50代?男〕
  • 人類にとって重要:教育、研究、医療に反映させて頂きたい。連携と「農」「環境」「医療」それぞれの関係者の壁をどうしたら取り去れるか、低くできるか。〔60代?男〕
  • ウイルスの株の同定を統一し、定義を同じにする必要があると感じた。〔50代?男〕
  • 経済活動との両立という切り口での討論。トリにインフルエンザが検出されたら全部処分という方法を繰り返すしかないのか。トリにワクチンという方法を考えてなぜ悪いのか。食の自給率の低い国として。〔50代?女〕
  • 今日的テーマであり、時事を得た"鳥インフルエンザ"のようなシンポジウムが、今後の優良事例となるのではないか。ご期待申し上げます。〔70代?男〕
  • 全ての基礎と思う。特に食は富んだ土から、高い品質の植物が現れ、そして肉が育ち健康が保たれる。全てを構築できるのは北里しかないのではないか。〔50代?男〕
  • 今後も聴講したい。特に私は土も大切ですが、水だと思います。海洋を含めた環境を考える必要があると思います。〔70代?男〕
  • とりわけそれぞれの部分が保持している危機管理体制においての連携を強化することが、肝要ではないでしょうか。その中でもリーダーシップをとるのは医療部門であると思います。〔30代?男〕
  • 農と環境と医療はそれぞれに目的は異なるが密接に関係している。目的が異なるため、一方の側面から見たときに大いなる不都合が生じてしまう。現在の徹底淘汰の手法が必ずしも良い選択であるとは思えない。〔30代?男〕
  • 連携は必要で大切なことである。それぞれはどう具体的に連携していくのかが今後うまく連携していくことができるかのカギ。〔40代?男〕
  • 「健康志向」の傾向が強い今日、自然との共生が最も健康に過ごせる基本でありこの企画の重要性を痛感しています。〔70代?男〕
  • 調査研究分野における貴大学の貢献には大変感謝しているところです。当市におきましては(特に貴大学が立地する麻溝台地区は)、住宅地と養鶏場が近接している等、鳥インフルエンザの人への感染のおそれが発生した場合に相当の影響が考えられるので、こうした研究成果をより積極的に地域に還元していただければ幸いです。また、今後新型インフルエンザ発生時に地域の中核的な医療機関としてより積極的に地元である相模原市に関わって頂けるよう要望いたします。〔40代?男〕
  • 連携があってはじめて進歩があることを確認でき今後の発展を期待する。総合討論は色々な問題が提起されていてよかった。時間の制限もあるので質問事項を前もって質問状のかたちで提起する方法も検討してほしい。〔70代?女〕
  • 現場にもっと視点を持ってきても良いのでは?今回の例で言えば養鶏場、医療現場など(アンケートでも構わないから)〔30代?男〕
  • 抗生物質の濫用による耐性菌の出現、解熱剤多用による免疫力低下、農薬や化学合成肥料に頼る依存した耕種管理から生じる作物の軟弱化。悪者をおしこめる在り方"従来のパラダイム、そうではない新しいパラダイムへシフトすべきで、テーマとして考えてもらいたい。〔50代?男〕
  • 3つの視点で運営できる大学が羨ましいです(単科大学出身です)。〔40代?男〕
  • 日頃から食の安全について努力しています。HPAIの発生予防のためにモニタリング等の業務を行っていますが、HPAIが発生した場合の防疫対応も業務となっているので、もしもの場合、突然ウイルスが変異し自分が感染することになったら...。多少の不安もあります。〔40代?男〕
  • 食の安全?安心がセットで言われている今日では、科学的な安全だけでは国民が納得できない部分があるので、このような機会は広く周知してほしいと感じた。〔40代?男〕
  • 鳥インフルエンザの発生地、担当者の報告を加えていただきたい。問題点を共有し、大きく前進することができるようお願いします。〔50代?男〕
  • 農や環境をいかに医療に生かすがが重要と考えます。そのためには、医療サイドから農をどのようにみるか、どのように受け入れるかが示されないと進まないように思います。現在までのシンポジウムはどちらかというと農から医のみのようです。理念上の連携でなく、実際の研究等での連携を進めてはいかがでしょうか〔40代?男〕
  • 食と健康と環境科学の中に位置付けることができるかどうか。興味がある。〔70代?男〕
研究室訪問 Y:獣医学部獣医微生物学
「農と環境と医療」を連携できる研究の素材や人を求めて、さまざまな職場を探索している。第25回目は、獣医学部獣医微生物学研究室の佐藤久聡教授を訪ねた。この研究室は佐藤教授と田邊太志講師で構成されている。研究分野の概要と課題を以下に紹介する。

研究分野の概要:ブドウ球菌は様々な動物種に化膿性皮膚疾患を引き起こすが、ヒトのブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、ブタの滲出性表皮炎、イヌの膿皮症、ニワトリの浮腫性皮膚炎等はその発病にブドウ球菌が産生する外毒素(表皮剥脱毒素)が関連すると考えられている。当教室では各種動物由来ブドウ球菌の産生する表皮剥脱毒素の構造を遺伝子工学的手法を利用して解析するとともに毒素活性と発病機構の関連について研究している。また、小動物(ネコ?イヌなど)のサイトカインの生物活性を解析し、病気の動物に対する治療への応用を検討している。

講座重点研究等主な研究課題

Y‐1. Staphylococcus hyicus 表皮剥脱毒素遺伝子発現系の開発及び発現毒素の活性解析 (研究室重点研究)
 新たな S. hyicus 表皮剥脱毒素遺伝子発現系を開発し、活性が保持された蛋白として本毒素を発現させ活性解析に応用する。
Y‐2. サイトカインの研究(研究室重点研究)
イヌ?ネコサイトカインの既知及び新規遺伝子をクローニングして大量発現し、発現蛋白の生物活性を検討すると共に、定量法を確立する。

学外研究機関との共同研究

Y‐3. Staphylococcus hyicus 表皮剥脱毒素の活性解析(民間企業との共同研究:佐藤久聡) S. hyicus 表皮剥脱毒素の活性主体と考えられるプロテアーゼ活性の発現に関わる分子構造と標的物質との相互作用を解析し、ブタの滲出性表皮炎の予防?治療に応用する。
Y‐4. 膿皮症罹患犬からのメチシリン耐性Staphylococcus intermediusの分離とその病原因子の解析(民間企業との共同研究:佐藤久聡)
 膿皮症罹患犬からS. intermediusを分離し、分離菌のメチシリン耐性遺伝子保有状況を調べるとともに菌体外毒素遺伝子の保有状況も調べ、メチシリン耐性S. intermediusの野外における浸潤状況を把握する。

学内共同研究

Y‐5. 獣医?畜産領域への先進バイオ技術還元に関する基礎技術開発総合プロジェクト‐日和見感染菌の毒素と宿主の相互作用の解明(ハイテクリサーチセンター?プロジェクト) 日和見感染菌のうち、特にブドウ球菌の産生する表皮剥脱毒素が宿主動物の皮膚中でどの様な機構により活性を発現するに到るかを検討する。
Y‐6. 愛玩動物感染症の原因究明、免疫学的解析及びサイトカイン応用への研究(獣医伝染病学研究室、小動物第2外科学研究室との共同研究) 愛玩動物におけるウイルス及び細菌感染症の病原因子の分離、免疫学的解析、予防法の確立を目指すと共にサイトカインを用いた免疫学的治療法の可能性を追求する。

「農と環境と医療」を連携するための研究課題キーワードには、「窒素」、「有害物質」、「重金属」、「安全食品」、「未然予防」、「リスク」、「教育?啓蒙」、「インベントリー」、「農業?健康実践フィールド」、「病原微生物」、「環境微生物」、「環境保全」、「環境評価」、「食と健康」、「感染」、「ホルモン」、「光の波長」、「環境応答」、「放射線(アイソトープ)」、「免疫」、「神経」、「内分泌」、「生体機能」などがあった。今回の微生物学研究室の内容は、「感染」および「病原微生物」に関連が深いと考える。

これらの研究課題キーワードについては、これまで各方面からご意見を頂いた。23回目の訪問を最後に、新しくキーワードを整理すると記した。しかし、今回さらに訪問を追加したので、改めてキーワードの整理をしたく、しばらく時間を頂きたい。あと残り1研究室を紹介する予定である。
研究室訪問 Z:獣医学部獣医病理学
「農と環境と医療」を連携できる研究の素材や人を求めて、さまざまな職場を探索している。第26回目は、獣医学部獣医伝染病学研究室の宝達勉教授を訪ねた。この研究室は、宝達 勉教授と田邊真紀助教で構成されている。研究分野の概要と課題を以下に紹介する。

研究分野の概要 猫および犬のウイルス病を中心に研究している。犬、猫のウイルス病にはまだワクチンの開発されていないもの、あるいは開発されているものの十分な効果が得られないものがある。そして、これらは犬、猫にとって重要な疾病である。基礎的研究を進めながらワクチン作出までを考えて研究を実施している。

講座重点研究

Z‐1. 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に関する研究(研究室重点研究、北里研究所)
 猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルスの一種であるFIPVの感染に起因し、その治療は困難であり発症猫のほぼ100%が死亡する。世界中に分布するこのウイルス病のワクチン作出は遅れている。その原因は、ウイルス外皮蛋白に対する抗体はウイルス感染を阻止する中和抗体としての作用を示さないで、逆にウイルスの感染を増強するという奇妙な現象が知られ、この問題が解決を遅らせている。当研究室では、この問題を解決する遺伝子発現蛋白を用いたワクチンの開発に成功し学術雑誌に発表した。

Z‐2. 猫免疫不全ウイルス(FIV)に関する研究(研究室重点研究、北里研究所)
a) FIV感染は世界中に分布し、その病原性も確認されている。このウイルスに対するワクチンは現在アメリカでのみ販売されている。このワクチンは、アメリカで分離されたウイルス株と日本で我々が分離したウイルス株の2株を含む不活化ワクチンである。現在、我々はこのワクチンを日本に輸入すべく試験成績を積み重ねている。
b) FIVはヒト免疫不全ウイルス(HIV)と類似する部分が多い。FIV感染猫では、感染直後に認められる活発なFIV増殖が数ヵ月後には低下し、血液中からのウイルス分離効率が極端に減少する(無症候期)。我々は、この時期のTリンパ球からFIV増殖を抑制する可溶性因子が産生されていることを明らかにした。この現象は、HIVでも確認されているがその因子の実態は不明である。この因子の減少がエイズウイルスの増殖を許し、ついにはAIDS発病に繋がっていると考えられる。現在は、この因子に関する研究を続けている。

Z‐3. イヌパルボウイルス感染症予防?治療抗体の開発(研究室重点研究、北里研究所)イヌパルボウイルス感染症は、汎白血球減少症とも呼ばれ、顕著な白血球の減少と激しい下痢?嘔吐を主徴とする致死率の高い感染症である。イヌパルボウイルス感染症を予防するためには、市販の不活化ワクチンや生ワクチンを接種することが最も効果的である。しかし、免疫機能未発達な幼犬には接種できず、また、母犬の初乳による移行抗体が残存する時期ではワクチンを接種しても十分な効果が得られないことが多い。イヌパルボウイルスに対する中和抗体は、イヌパルボウイルス感染症の予防及び治療に極めて有効である。そこで、犬パルボウイルスに対する中和抗体を、イヌパルボウイルス感染症の治療?予防に応用する。

「農と環境と医療」を連携するための研究課題キーワードには、「窒素」、「有害物質」、「重金属」、「安全食品」、「未然予防」、「リスク」、「教育?啓蒙」、「インベントリー」、「農業?健康実践フィールド」、「病原微生物」、「環境微生物」、「環境保全」、「環境評価」、「食と健康」、「感染」、「ホルモン」、「光の波長」、「環境応答」、「放射線(アイソトープ)」、「免疫」、「神経」、「内分泌」、「生体機能」などがあった。今回の伝染病学研究室の内容は、「感染」および「病原微生物」に関連が深いと考える。

これらの研究課題キーワードについては、これまで各方面からご意見を頂いた。23回目の訪問を最後に、新しくキーワードを整理すると記した。しかし、今回さらに訪問を追加したので、改めてキーワードの整理をしたく、しばらく時間を頂きたい。これで研究室の訪問は終了する。
コラム:真実と事実
先日、ある学術振興財団の役員会に参加する機会があった。財団の会計に間違いないことを証明する書類に、「以上の報告は??????真実である」と書かれていた。これまで筆者の脳は、「真実」と「事実」を明解に使い分けていたが、この書面の「真実」を見て、急に両者の言葉に対する筆者の脳の定義が揺らいだ。

これまで、「真実」は英語のいう「truth」、「事実」は英語のいう「fact」に相当すると思いこんでいた。

小学館の日本国語大辞典によれば、「真実」の説明は次のようである。1)うそでないこと。偽りでないこと。また、そのさま。ほんとう。誠。しんじち。2)仏語。仮でないこと。永久に変わらない絶対究極のまことのもの。また、そのようなさま。

「事実」は、次のようである。1)実際にあった事柄。現実にある事柄、真実のこと。哲学では、特に必然的にあることや、単に可能としてあることと区別していう。2)特に、法律で、一定の法律効果の変更や消滅を生じる原因となる事物の関係をいう。

例えば、神は存在するという「真実」はある。なぜなら人類誕生以来、何兆人あるいは何京?垓?穣人のひとびとが神の存在を信じてきた。このことはまぎれもない真実である。一方、神が存在するという「事実」を示した者、あるいは見た者は数少ない。私の短い生涯では、そのような人を知らない。

すなわち、「真実」は永久に変わらない絶対究極的なもので、「事実」は目の前に数字や物などで実際に証拠を示せるものと考えていた。別の表現をすれば、「真実」には哲学?心理学?社会科学?宗教学などの要素が含まれ、「事実」には数学?科学などで証明?実証された姿がみえるものだと思っていた。著者の脳が揺らいだのは、この故であった。

西洋においては、神の存在を証明するために科学が栄えた。このように、科学と神は紙の表と裏、手のひらと甲の関係にある。そのことは、アインシュタインの様々な格言を例にとれば明らかなことである。

例えば、「われわれが進もうとしている道が正しいかどうかを、神は前もって教えてはくれない」、「知性を神にしてはいけない。神は強い筋肉を持っているが、人格は持たない」、「私は神がどういう原理に基づいて世界を創造されたか知りたい。そのほかの事は小さな事だ」。

宗教と科学は、アインシュタインの想いのように紙の表と裏の関係にある。「真実」と「事実」は、これと似て「実」の表と裏の関係にあるのかも知れない。となると農医連携の学問とは、これまでの近代科学が獲得した「事実」をもって、「医食同源」などの「真実」を証明していくものともいえるのではなかろうか。
*本情報誌の無断転用はお断りします。
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長通信
情報:農と環境と医療28号
編集?発行 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室
発行日 2007年7月1日