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農医連携教育研究センター 研究ブランディング事業

第1号

第1号
現代社会における食?環境?健康

目次

  • 『現代社会における食?環境?健康』の発刊にあたって
  • 第1章 農?環境?医療の連携の必要性
  • 第2章 千葉大学環境健康フィールド科学センターの設立理念と実践活動-大学における新たな教育研究?社会貢献方法論の構築を目指して-
  • 第3章 医学から農医連携を考える
  • 第4章 食農と環境を考える
  • 第5章 東洋医学と園芸療法の融合
  • 第6章 人間の健康と機能性食品
  • 総合討論とアンケート
  • 著者略歴

発刊にあたって

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長 柴 忠義

大学では折に触れて語っていることですが、北里柴三郎博士は門下生らと研究の研鑽を図りコミュニケーションを深めるため、月に1度集会を開きました。しかし仕事の都合で参加できない多くの同窓生達からその記録の刊行を熱望され、1895年に「細菌学雑誌」として発刊しています。英国の世界的な科学雑誌「ネイチャー」の創刊(1869年)から26年後のことです。科学の発展に知の共有は不可欠と考えた博士の思いを本学は今に受け継ぎ、その一つとして今般『現代社会における食?環境?健康』を発刊する運びとなりました。北里博士といえば我が国近代医学の祖として、また世界的な細菌学者として有名ですが、情報発信の大切さにいち早く気づき、今でいうベンチャー企業の設立にも尽力するなど、その活動は多岐にわたります。博士のほかにも多面的に思考し多角的に行動した人は数多くいますが、今思い浮かぶ人物3名を以下に挙げてみました。

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@獣医畜産学部が青森県十和田市に創設されて今年(2006年)で40周年を迎えます。当地は「願わくはわれ太平洋の橋とならん」という言葉で有名な新渡戸稲造博士のゆかりの地でもあります。博士は1862年に盛岡に生まれていますが、祖父の新渡戸傳(ツトウ)は三本木原野(十和田市)の新田開発に多大の功績を挙げた人物で、十和田湖から流れ出る奥入瀬川から全長11キロもの穴堰?陸堰を掘る難工事を4年かけて完成させています。この影響からか博士は開墾事業への関心を抱き、札幌農学校に進学しています。また、教育者、農学者、知的国際人、宗教家などの多彩な顔を持ち、特に農学への情熱は博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室通信「情報:農と環境と医療」(4号?12号)の中でも紹介しています。

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@水産学部は岩手県大船渡市にありますが、その北西に位置する花巻市は今年2006年に生誕110年を迎えた宮沢賢治の故郷としても有名です。賢治は、花巻農学校で教師を務めたのち、農耕生活を送りながら地域の青年たちに農業や芸術を説きました。童話創作のほか、地質学、天文学、生物学などの多彩な研究活動でも知られています。地質学者としての訓練を受けた賢治はフィールドワークの達人であり、彼の文学の出発点は、生物や鉱物を細かく観察して自然の変化を敏感に感じとり、湧き起こる様々な感情や想念とその交感を微細に記録するという方法にあります。賢治は、生き物はみな兄弟であり、生き物全体の幸せを求めなければ、個人の本当の幸福はないと考えました。

日本近代史における先駆的なエコロジストは誰かを突き詰めると、南方熊楠という人物に出遭いました。幼少の頃から驚異的な記憶力で神童と謳われ、博覧強記という言葉はこの人のためにあると思うほどです。若くして渡航した熊楠は、1892年に当時生物学と民俗学のメッカだったロンドン(大英博物館)に落ち着き、そこで世界一流の学者を相手に丁々発止と論争を展開しました。その英文論考63篇は「ネイチャー」誌上に掲載されています。1900年に14年間の外国滞在から帰国した熊楠は、その後、那智の森に3年間入り浸り、膨大な数の粘菌や隠花植物などを採集しては顕微鏡をのぞいて研究に没頭しました。そして微細なものを観察しながら生命の不思議に迫り、森羅万象が全て因果律で動き、互いに関連し合いながら存在していることを確信しました。

20世紀の科学技術は、農学においては人びとを飢えから救い、飽食の世界を導き出そうとしています。一方医学においては、病気を克服し疫病から人類を解放させつつあります。

しかしながら、これらの科学技術は人びとを専門だけの迷路に追い込み、生きていない専門用語のみを駆使する知と知の分離現象を生じさせたのです。

このようにみてくると、一見異分野と思える専門を多面的に持ち、これらを紡ぎ合わせることによって独創性に富んだ価値の高い成果を達成した上述の3名の偉人たちは、持続的発展が期待される21世紀社会には特に必要とされる人物像と考えます。本学が先駆的に取り組んでいる「農?環境?医療の連携」には、かかる人材育成の視点を積極的かつ網羅的に取り込んでいることも、ご理解いただければ幸いです。そしてこの新たな挑戦が教育?研究面で一層の飛躍を遂げられるよう、今後ともご指導、ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。