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農医連携教育研究センター 研究ブランディング事業

第3号

第3号
鳥インフルエンザ-農と環境と医療の視点から-

目次

  • 『鳥インフルエンザ:農と環境と医療の視点から』発刊にあたって
  • 第1章 農と環境と医療の視点から鳥インフルエンザを追う
  • 第2章 動物由来ウイルス感染症の現状と問題点
  • 第3章 高病原性鳥インフルエンザの感染と対策
  • 第4章 野鳥の渡り鳥や生態と感染拡大の関係
  • 第5章 野生鳥類の感染とその現状
  • 第6章 新型インフルエンザの脅威-鳥インフルエンザとヒトへの影響-
  • 第7章 高病原性鳥インフルエンザとワクチン対策
  • 総合討論とアンケート
  • 著者略歴

発刊にあたって

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長 柴 忠義

日本学術会議は、2006年の20期から従来の7部制を改変して3部制をとりました。これまでの領域は、文学、法学、経済学、理学、工学、農学、医学の7部制に分かれていましたが、新しい部制では、「人文科学」、「生命科学」、「理学および工学」の3領域にまとめられました。

また従来の日本学術会議は、数多くある学会の組織を基盤とし、各学会関係の研究連絡委員会と学術会議の活動とで支えられてきました。領域が改変された後では、これまでのような学会別の活動が希薄になり、それぞれの専門分野の横断的な課題別活動が中心になってきました。

このことは、従来の学会活動、科学研究費の配分、各分野の研究動向に少なからぬ影響が及ぶことを意味しています。たとえば、20期からの学術会議は、課題中心に委員会を組織し、社会のための学術を全面に出しています。

日本学術会議は、この国の学術の基盤であります。いずれの大学も研究所も、日本学術会議の方向を注意深く見つめながら、わが国の今後の教育や研究を志向しなければならないと思います。学術会議の活動方針には、わが国の科学がこれまで経験してきた様々な事象への反省や、新たな科学の展開への想いが含まれていることでしょう。20期の取組みの成果が大いに期待されるところです。

話が変わります。人類の活動はウイルスに対してであれ雑草に対してであれ、地球の生命体をさまざまな様態で撹乱しています。小さなインベーダーによる生態系の破壊が生じつつあります。

2001年9月に、わが国において牛海綿状脳症(BSE)が発生しました。牛の脳組織に空胞ができ、中枢神経が障害を受ける病気です。BSEに感染した牛のうち、とくに危険部位といわれる脳?神経組織および回腸遠位部など内臓類を食することにより、極めて稀ですが人間に感染し、痴呆化し死亡するといわれています。これも、小さなインベーダーによるものです。

いま、新たな心配事が生じています。ここ数年、アジアで流行していた鳥インフルエンザが、欧州でも確認されています。感染が繰り返されることで病原体のウイルスが変異し、人間社会で爆発的な流行を引き起こす新型インフルエンザ発現の可能性が高まっています。また、インベーダーの撹乱です。

世界保健機関(WHO)をはじめ多くの国が、大流行に備え体制を整えつつあります。日本も例外ではありません。厚生労働省は2005年の11月14日、近い将来に発現する危険性が高まっている「新型インフルエンザ」が国内で流行した場合、厚生労働省が非常事態を宣言することなどを定めた行動計画を公表しています。

農は環境を通した人の営みです。生態系を無視した人の営みはあり得ません。その生態系は、大きな生命の交響楽団といえます。無数の生き物が様々な環境のなかで作りあげている生態系のもつ秩序は、目をこらしてみても見えない無数の環境資源と生物の相互作用によるネットワークとも言えます。生態系に生きる生物とこのネットワークそのものは、調和が崩れても自動的に調和が取り戻されるように仕組まれています。だからこそ自然世界の調和は、永遠に終わることのないハーモニーを奏で続けることができるのです。

過去におけるBSE の問題、今回の鳥インフルエンザの問題、そして将来も起こるであろうこれらの「小さなインベーダー」の問題について、真剣に取り組まなければ、人類の未来は暗いものになります。これらの問題は、常に農と環境と医療に密接に関わっています。この関連を切り離して「小さなインベーダー」問題の解決はあり得ません。

日本学術会議の新しい「生命科学」の領域は、この「小さなインベーダー」問題の解決にも不可欠な考え方だと思います。また、わが博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@が新たに鮮明にした教育?研究目標、「農と環境と医療の連携」そのものでもあります。この領域は、知と知の分離を克服することの重要性が強調される場でもあります。

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携学術叢書第3号がこの問題の解決の一助となり、さらには農と環境と医療の連携に対し、新たな発想を生むきっかけとなればまことに嬉しく思います。