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農医連携教育研究センター 研究ブランディング事業

34号

情報:農と環境と医療34号

2008/1/1
新しい年を迎えて:平成20年元旦
新年あけましておめでとうございます。皆様の暖かいご支援のもとに、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室通信「情報:農と環境と医療」も34号を迎えることができました。目標の50号まで、皆様のご支援宜しくお願いします。

昨年を振り返ります。平成18年7月21日に設置された博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携委員会は、平成19年10月25日に72頁にわたる「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携構想について(答申)」を学長に提出しました。そこには、「農医連携の必要性」、「農と医の歴史的背景」、「農医連携の動向」、「農と医の共生研究」、「農医連携の教育?啓蒙」などに関わる内容がまとめられています。

また、平成19年度から農医連携に関わる講義が開始されました。医学部の1年生を対象に行われる「医学原論?医学原論演習」の一部、さらに獣医学部の1年生を対象に行われる「獣医学入門I」、「動物資源科学概論1」および「生物環境科学概論I」の一部がそうです。そのことは、既に「情報:農と環境と医療 25号」でお知らせしてあります。

さらに、医学部では夏期休暇を利用し「医学原論演習」の一環として「八雲牧場訪問及び講義」への参加希望者を募集しました。この演習には6人の学生(男女それぞれ3人)が参加し、8月20~22日の3日間の日程を終えました。内容は、牧場見学、講義、演習(牛追い?ベーコン作り?投薬?鼻紋取り)、懇親会などでした。詳細は既に「情報:農と環境と医療 32号」でお知らせしました。

続いて、「教養演習B:農医連携論」(半期)を平成20年度から一般教育部の協力の下に開講することになりました。詳細は、上述した「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携構想について(答申)」に掲載されています。

加えて、昨年の暮れから学部を越えた農医連携に関わる学内研究を立ち上げるべく鋭意努力しております。これについても、「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携構想について(答申)」に掲載されています。関係される各位には、ご協力の程宜しくお願いします。

さて、新しい年を迎えての思いを一言申し上げます。われわれがこれから生きようとする21世紀も、すでに7年の歳月が経過しました。この21世紀の世界的規模での課題とは、一体なんでしょうか。それは「生命」と「環境」と「情報」と「エネルギー」ではないでしょうか。いずれも、現在の社会構造を根底から変革する威力を内包しているうえ、これらに対応しないで事を怠ると、まさに遅れて取り残された国にならざるを得ないでしょう。

加えて、一国の対応の遅延や混乱が世界中の国々に様々な悪い影響をもたらします。地球温暖化問題、情報の2000年問題および放射能汚染問題などがその良い例です。

ここでは、「環境」のうち農と健康に関わる地球温暖化の問題について触れます。20世紀の技術知は、われわれの文明に様々な影響を及ぼしました。なかでも宇宙開発の技術知は、われわれに宇宙からの視点でものを見ることを認識させてくれました。すなわち相対的、普遍的あるいは俯瞰的な視点を提供してくれたのです。

その結果われわれは、地球の温暖化を始めとする地球と人類の来し方行く末を真剣に考えなければ、われわれの未来に希望がもてないことを知りました。幸いなことに、ノーベル賞委員会は、1970年代から地球温暖化問題に取り組んでいるアル?ゴア前米副大統領とIPCC「Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル」に、2007年のノーベル平和賞を授与すると発表しました。このことによって、地球の温暖化問題が世界の人びとの掌中に届いたことになります。

危機的状況にある地球の温暖化が人間の生活に及ぼす負の影響は、極めて重大です。干ばつ、塩類化、土壌浸食などによる食料問題、および熱射病、紫外線増加、デング熱、マラリアなどによる医療問題は、いずれも人類の未来に暗雲の影を落としています。

地球温暖化の影響は、いつの時代も食料を提供する農業と、人の健康と生命を守る医療に密接に関わっているのです。環境を通した農と医療の連携が必要な所以でもあります。

このような地球温暖化に対して、数多くの国、数多くの組織や個人が、各国の政治や経済や産業が、宗教や医学や教育や哲学が、そして芸術までが、なべて躍起になって現象の解明や対策に苦慮しています。人の生命を最優先にし、環境と経済が調和できる視座を求めて。しかし、66億人の人口を抱えるこの地球では、原理的にはこの調和は難しいと思われます。

温暖化の影響は、地球のいたるところで見られます。国の内外の例をあげればきりがありません。なかでも昨年の11月の報道は、人類の行く末に暗澹たる思いをわれわれに抱かせました。

島全体の8割が万年雪と分厚い氷床に覆われているデンマーク領のグリーンランドの氷が、地球温暖化の影響で溶解し始めたのです。永久凍土の融解が進んだことにより、さらに深部までの資源探索が可能になったというのです。グリーンランドの地質調査機関(GEUS)の石油?天然ガス担当、フレミング?クリスチャン氏は「温暖化の影響で開発の見込みが拡大している。海上の油田開発は流氷の危険が迫っているが、石油の需要増が続けば、採算が合う可能性が出てくる」と語った、と産経新聞(2007.11.18)に報道されています。

これを読んで驚きました。多くの人びとが躍起になって温暖化を阻止しようとしているとき、一方では、温暖化の原因も理解できず、永久凍土が融けたからそこから温暖化の原因である石油を採掘しようと言う人びとがいるということに驚いたのです。

われわれの知は何であったのでしょうか。また同じ事を繰り返すわれわれ。われわれは何故に豊かになったのでしょうか。これらのことを考えようともしない経済の鬼が跋扈しているのです。要素還元主義はいつ止まるのでしょうか。いつまで経済優先の社会が続くのでしょうか。経済の中に環境があるという思考をかなぐり捨て、環境の中に経済があるという思考に急速に移行しない限り、人類の未来は暗い。

東欧の詩人ゲオルゴ?ゲオルギウの言葉と言われているが、開高 健が生前こよなく愛した言葉、「明日、世界が滅びるとも 今日、あなたはリンゴの木を植える」が思われます。
第5回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの開催 地球温暖化:農と環境と健康に及ぼす影響評価とその対策?適応技術
開催日時:平成20年3月25日(火)13:00~18:00
開催場所:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@白金キャンパス 薬学部コンベンションホール
主 催:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ 
後 援:内閣府(予定)?農林水産省(予定)

開催趣旨

われわれはなぜ、人類や文明がいま直面している数々の驚異的な危機に思いが及ばないのだろうか。

地球温暖化がさまざまな生態系に極めて有害な現象を引き起こし、地球生命圏が、すでに温暖化制御の限度を超えてしまっているのに、ひとびとがそれを理解できずにいるのはなぜだろうか。

米国が京都議定書から離脱したり、先進国と途上国の間で政治的な綱引きが行われたり、有効な国際的温暖化対策が進んでいないのはなぜだろうか。

地球には、小は微生物から大はクジラにいたるヒトを含めたあらゆる生物が生息しているという概念、そしてこれらの生物がさらに大きな多様性を包み込む「生きている地球」の一部だという概念を、われわれは心の底からまだ理解していないのだろうか。

これらすべての危機的な現象が、食料を豊かに生産し、便利で文化的な生活を営むわれわれの活動に由来することに、なぜ気づかないのだろうか。たとえ気づいていても、これを改善できないのは何故だろうか。

しかし幸いなことに、ノーベル賞委員会は、1970年代から地球温暖化問題に取り組んでいるアル?ゴア前米副大統領とIPCC「Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル」に、2007年のノーベル平和賞を授与すると発表した。このことによって、地球の温暖化問題が世界のひとびとの掌中に届いたことになる。

危機的状況にある地球の温暖化が人間の生活に及ぼす負の影響は、極めて重大である。干ばつ、塩類化、土壌浸食などによる食料問題、および熱射病、紫外線増加、デング熱、マラリアなどによる医療問題は、いずれも人類の未来に暗雲の影を落としている。

地球環境の変動は、いつの時代も食料を提供する農業と、人の健康と生命を守る医療に密接に関わっているのである。

したがって今回は、地球温暖化が農と環境と健康に及ぼす影響とその対策?適応技術に関するシンポジウムを開催する。なお講演者は、これまで様々な形でIPCCに携わってこられた方々である。
講演プログラム

13:00~13:05開催にあたって博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長
柴 忠義
13:05~13:40 IPCC報告書の流れとわが国の温暖化現象博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@教授
陽 捷行
13:40~14:20温暖化による陸域生態系の影響評価と適応技術筑波大学大学院生命環境科学研究科教授
林 陽生
14:20~15:00農業生態系における温室効果ガス発生量の評価と制御技術の開発 (独)農業環境技術研究所物質循環研究領域上席研究員
八木  一行
15:10~15:50気候変動による感染症を中心とした健康影響東北大学大学院医学系研究科教授
押谷 仁
15:50~16:30 IPCCの今宮城大学国際センター准教授
あん?まくどなるど
16:30~17:10気候変動の影響?適応と緩和策 ‐統合報告書の知見‐ (独)国立環境研究所社会環境システム研究領域長
原沢 英夫
17:10~18:00総合討論香山 不二雄?陽 捷行
連絡先:
〒228-8555 神奈川県相模原市北里1丁目15番1号
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室
古矢鉄矢?田中悦子(noui@kitasato-u.ac.jp)
Tel:042-778-9765 Fax:042-778-9761
第4回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの内容: (5)コーデックスの状況と我が国の取り組み
平成19年10月12日に開催された第4回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムのうち、演題「コーデックスの状況と我が国の取り組み」を紹介する。残りの演題と総合討論については、次号以降に順次紹介する。

コーデックスの状況と我が国の取り組み

農林水産省 消費?安全局農産安全管理課 調査官:瀬川 雅裕

はじめに

食品安全行政にリスクアナリシスが導入され、我が国においても科学に基づいた行政の推進が求められている。また、世界貿易機関の「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」では、国内におけるリスク管理措置が科学的原則及び国際基準に基づいていることを求めている。このような中で、農林水産省においても食品の安全性に関するリスク管理の標準的な作業手順を定め1)、これに基づいた取り組みを進めている。

カドミウムなど重金属等についても、我が国では、これまでは鉱山排水等による一部の高濃度の環境汚染地域における健康被害(カドミウム)や農産物の生育阻害(ヒ素、銅)を契機とした対策が実施されてきた。近年はこれらに加えて、国際的な食品規格の作成の場であるFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)における検討などの国際的な動向を踏まえ、食品安全の観点から農産物の含有実態調査や農作物のカドミウム吸収抑制技術の確立?普及、リスクコミュニケーションに取り組んでいる。

コーデックス委員会の状況
 (汚染物質のリスク管理)


コーデックス委員会は、分野ごとに部会が置かれており、汚染物質部会(CCCF:注)が重金属等の汚染物質やカビ毒等の食品に生産過程等で非意図的に含まれる可能性のある有害物質を担当している。また、汚染物質のリスク評価は、毒性等の専門家から構成されたFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が担当しており、JECFAはコーデックス委員会からの依頼に基づき汚染物質の毒性評価や食品からの摂取量評価を実施する仕組みになっている。

コーデックス委員会が、食品中の汚染物質の国際基準値を設定することは広く知られているが、近年は汚染物質のリスクを低減するため農産物の生産工程や食品の加工行程を通じて汚染を未然に防止したり低減していくことにも重点が置かれている。このため、様々な汚染物質を対象に生産者や加工業者の遵守すべき行動規範が作成されている。

基準値の設定とこれによる市場からの排除の効果は、主として高濃度に汚染物質を含む食品の排除であるのに対し、生産工程や加工工程における適切な低減技術の導入は、流通している当該品目の汚染物質濃度を低減し、結果として汚染物質の摂取量分布を全体的に低減する効果を持っている。

これまで、コーデックス委員会で検討されてきた環境汚染物質は、後述するカドミウム以外に、鉛、ヒ素、ダイオキシン類、メチル水銀などがある。既に鉛については、食品中の鉛濃度を低減するための行動規範と農産物、畜産物、水産物などを対象とした基準値が設定されている。ダイオキシン類については、分析に関する時間と費用を考えると環境中のレベルを引き下げる汚染源対策がより効果的との認識から、行動規範を作成し基準値の検討は中断されている。また、ヒ素については、JECFAにより毒性の高い無機態のヒ素について暫定耐容摂取量が設定されているが、食品中に含まれるヒ素の科学的形態や形態別の毒性が明らかになっておらず、また形態別の分析法が未確立なこと等の理由から、1999年以降作業が中断されており今後の検討課題となっている。

脚注:2006年までは食品添加物?汚染物質部会(CCFAC)が担当していたが、2007年から汚染物質部会(CCCF)と食品添加物部会(CCFA)に分かれている。

(カドミウムの基準値の検討)

コーデックス委員会では、1998年の第30回CCFACにおいて提案された予備的な基準値原案を基に食品中のカドミウムの国際基準値が検討されてきた。2005年7月に小麦、野菜などの基準値が設定され、残された精米、軟体動物(海産二枚貝、頭足類)についても2006年7月に基準値が採択された。1998年当時の予備的な基準値原案には穀類、野菜、果実、肉類(臓器を含む)、軟体動物、甲殻類などが含まれていた。その後の検討で、JECFAのリスク評価を踏まえながら、世界各地域のカドミウム摂取量への寄与度などを考慮して基準値策定の必要性が低いと考えられる食品群について検討を中止したり、カドミウム濃度の実態に応じて基準値が修正されてきたものである。

では、コーデックス委員会ではカドミウムなど非意図的に食品に含まれる可能性のある汚染物質についてどのように基準値を設定することになっているのか。「食品中の汚染物質と毒素に関するコーデックス委員会の一般規格汚染物質」(Codex General Standard of Contaminants and Toxins in Food:GSCTF)において、以下のような主要な原則が規定されている。
  1. 重要な健康リスクがあり、貿易問題があるもののみに設定する
  2. 汚染物質等の摂取寄与が大きな食品に対してのみ設定する
  3. ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則に従って設定する

ALARAの原則とは、合理的に到達可能な範囲でできるだけ低く設定することである。具体的には、消費者の健康保護が図られることと適切な技術や手段の適用によって汚染しないように生産されていることを前提に、生産や取引の不必要な中断を避けるため、食品中の汚染物質の通常の濃度範囲よりもやや高いレベルに設定することとなっている。

我が国の主要な食料である米の国際基準値も、1998年当時の予備的原案では0.2mg/kgとなっていた。検討の過程で、我が国の米などカドミウム濃度の実態調査とこれに基づく確率論的な摂取量評価2)に基づく提案により0.4mg/kgに修正された。その後、JECFAが米を含む各食品の基準値案を適用した場合のカドミウム摂取量へのインパクトを世界各地域の食品消費形態ごとに推定し、その結果を考慮してコーデックス委員会で検討し最終採択されている。

我が国の取り組み
(カドミウムの対策)


我が国では、鉱山排水等によってカドミウムに高濃度に汚染された地域の飲料水や水田で生産された米などによる住民の健康被害が大きな社会問題となり、従来から食品衛生法に基づく米の流通規制や農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づく土壌汚染対策が実施されてきた。

一方、コーデックス委員会が基準値設定の基礎としているカドミウムの健康影響は、より低濃度の食品を長期間摂取した場合の健康影響であり、JECFAによって生涯にわたってカドミウムを摂取し続けた場合に健康影響がない摂取量の指標(暫定耐容摂取量)として、一週間あたり体重1kgあたり7μgが設定されている。

1977年度から厚生労働省で実施されている汚染物質の摂取量調査によると、2004年の日本人の日常食からのカドミウムの1日摂取量の平均は約20μgであり、JECFAの暫定耐容摂取量と比較すると、ヒトの体重を50kgとした場合、耐容摂取量の4割程度となっている。また、カドミウム摂取の内訳で、最も大きい割合を占めるのは米で、摂取量の半分程度を占めている3)。

このため、農林水産省では1997年から米(約3万7000点)を中心に、我が国で生産される農畜水産物に含まれるカドミウム濃度実態(濃度分布)を把握するとともに、農産物の生産段階におけるリスク低減技術の開発?普及を進めてきている。特にカドミウムの摂取寄与が最も大きい米については、近年、水稲の出穂期前後に湛水し、土壌を還元状態に保つことでカドミウムの吸収を抑制し、米のカドミウム濃度を低減できることが明らかにされており、潜在的にカドミウム濃度が高くなる可能性のある地域を中心に積極的に普及を図っている。

水稲の水管理は2004年度は3万ha、2006年度には約4万ha以上で取り組まれている4)。1970年代から30年以上かけて実施されたカドミウムの高濃度汚染地域を対象とした客土等の対策が、約6千ha5)であるのと比較するとその広がりが分かる。もちろん客土等の土木的な対策と異なり、営農的な対策である水管理の効果はその年々の気象条件に左右されるという面はあるが、消費者のカドミウムの長期的な摂取を減らす効果は十分有するものと思われる。

農林水産省が実施している継続的な米のモニタリング調査結果のうち、過去に0.4mg/kg以上が検出した地域のデータを用いて食品からのカドミウムの摂取量の推移を計算すると、2004年以降減少傾向にある6)。この他にも、水稲以外の農作物のカドミウム吸収抑制、ファイトレメデーション、土壌洗浄などの技術開発を行っている。

(ヒ素等の実態調査)

農林水産省では、食品安全に関する情報や消費者、食品事業者などの関係者の意見を基に、今後優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質のリストを作成し、計画的に食品中の実態調査等を実施することにしている7)。

優先リストに含まれる環境汚染物質は、ヒ素、カドミウム、メチル水銀、ダイオキシン類、鉛等である。このうちヒ素、鉛、水銀については、今後のリスク管理措置の必要性の検討の基礎資料とするため、2003年から4カ年計画で国産農産物を対象とした全国的な調査を実施している。調査全体の結果は現在とりまとめ中であるが、2カ年の中間的結果から消費者が農産物経由で摂取する平均的な量を試算すると、
  1. 鉛についてはJECFAが設定した暫定耐容一週間摂取量の1割以下、
  2. 総ヒ素についてはJECFAが評価した無機態ヒ素の暫定耐容摂取量の3割程度、
  3. 総水銀については食品安全委員会が評価した妊婦を対象とするメチル水銀の耐容一週間摂取量の1割以下、となっている。

ヒ素については、他の農産物に比べ米の濃度が高く摂取寄与も大きいため、暫定耐容摂取量が設定されている無機態ヒ素の分析も実施中である。また、我が国で摂取寄与が大きいとされる水産物中の形態別ヒ素の分析法に関する研究や実態調査が実施されている。

ダイオキシン類については産物の寄与は大きくないが、1999年~2002年に全国的な実態調査によりベースラインとなる濃度が把握されており、農地周辺で環境汚染が判明した場合の農産物への影響の有無を判断する際の目安となっている。現在は、排出抑制対策による経年的な濃度変化の有無を把握するための調査を実施している。

おわりに

冒頭に述べたように、近年、食品安全行政にリスクアナリシスの考え方が導入されたところである。カドミウムについては、現在実施されている食品安全委員会の健康影響評価の結果が出された後、厚生省の薬事?食品衛生審議会において国内基準値改訂の審議が行われるが、国内のリスク管理措置を決定する際には消費者、生産者等の関係者によるリスクコミュニケーションが不可欠である。

これまで農林水産省と厚生労働省が連携して意見交換会を開催したり、ホームページを通じた情報提供に努めているが、関係者間のコミュニケーションを成立させるためにもリスク(健康への悪影響が発生する確率と影響の程度)に関する科学的な情報と生産現場の対応に関する適切な情報が重要である。

また、食品の安全性を確保するためには、最終産物の管理だけでなく、一次生産から消費までの行程で食品の安全性を確保する、いわゆるフードチェーンアプローチが重要である。このため、行動規範を作成するとともに、生産段階の対策についてはGAP手法(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)へ組み込んで生産者に普及していく新たな枠組みを構築しているところである。今後、カドミウムの水管理等の対策についてもこれらの枠組みを通じて生産現場への定着を図っていく。

ヒ素については、リスク管理の初期作業を実施しているところであるが、現在実施している農産物中の濃度実態の把握と併せて、人に対する毒性の情報や、土壌などの生産環境や農産物中における形態変化や動態等に関する科学的な情報を幅広く収集していく必要があろう。

参考資料
  1. 農林水産省?厚生労働省(平成17年8月)「農林水産省及び厚生労働省における食品の安全性に関するリスク管理の標準手順書の作成について」
  2. 新田裕史(平成15年11月)「日本人のカドミウム暴露量推計に関する研究 平成15年度中間解析報告書」
  3. 厚生労働省(平成18年8月)「食品に含まれるカドミウムに関するQ&A」
  4. 農林水産省(平成19年5月)「平成19年度における食品のカドミウム対策行動計画」
  5. 環境省(平成18年12月)「平成17年度農用地土壌汚染防止法の施行状況について」
  6. 農林水産省(平成19年7月)「農林水産政策評価結果(平成18年度に実施した施策の評価結果)」
  7. 農林水産省(平成18年4月)「食品の安全性に関する有害化学物質のサーベイランス?モニタリング中期計画」
  8. 農林水産省(平成18年3月)「国産農産物の鉛、ヒ素及び水銀の含有実態調査の中間とりまとめ結果」
第4回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの内容: (6)カドミウム摂取の生態影響評価-耐用摂取量推定の試み-
平成19年10月12日に開催された第4回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムのうち、演題「カドミウム摂取の生態影響評価-耐用摂取量推定の試み-」を紹介する。残りの演題と総合討論については、次号以降に順次紹介する。

カドミウム摂取の生体影響評価-耐用摂取量推定の試み-
 
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@医療衛生学部教授:太田 久吉

1.カドミウムの生体影響

カドミウム(Cd)の生体影響については、公害病として、Cd慢性曝露による腎機能障害と骨代謝障害を呈する「イタイイタイ病」がよく知られている。また、産業現場では急性、慢性の中毒として、肺水腫、金属熱、気管支炎、肺気腫、腎機能障害等の生体影響が報告されている。さらに、生殖?泌尿器、循環器系疾患、糖尿病との関与や発癌や内分泌攪乱作用の可能性も動物実験等を含め報告されている(ICPS 1992,Nogawa, et al.1999, Goyer, 1997)。

慢性Cd曝露による腎機能と骨代謝に及ぼす影響については、一般に腎機能障害に続く骨代謝障害と考えられているが、腎機能障害の評価に関わる指標の解釈や、骨代謝障害の鑑別についても骨粗鬆症と骨軟化症、あるいはその両者の発現の関係が問題とされている。また、Cdの生体細胞膜透過(移送メカニズム)の機構や腎障害発現の機構、骨代謝障害発症の機構については、依然その詳細は解明されていない(ICPS 1992,Nogawa,et al.1999, Goyer, 1997, 太田 2001, Ohta. et.al.2000)。

2.Cd摂取量に係わる課題

日本では、農産物中Cd濃度が比較的高い地域が偏在し、食物摂取によるCd曝露の健康影響が懸念され、現在も疫学調査が行われている。日本人の主食は米飯で、米中Cd濃度の耐容摂取量は、Cdの生体に対するDose-Effect Relationshipに基づく検討と設定が必要である。

現在、日本の米中Cd濃度の基準値は食品衛生法に基づいて1.0ppmとされ、0.4ppm以上の玄米は流通禁止措置がとられている。国際的な基準設定の機関であるFAO/WHO合同食品規格委員会(CODEX)コーデックス委員会で0.2ppmが提案されたが、現在、日本では0.4ppmを基準としている。FAO/WHO合同食品規格委員会(CODEX)コーデックス委員会の提案値0.2ppmが妥当であるのか、また十分な根拠があるのか、健康影響評価の指標と意義並びに判定基準の設定に関する一致した見解が得られていないようである。なお、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)において、暫定耐容週間摂取量(PTWI)は7μg/kg/weekとされている。ヒトの日常摂取レベルでのCd摂取の生体影響評価に関する実験研究と疫学調査のさらなるデータ蓄積は、リスク評価に重要である。

3.Cdの生体影響評価における問題点

Cdの生体影響評価に関する実験研究では、これまで問題解決を目的とした比較的多量の注射による実験や生体機能の関与を明らかにするための外科的処置を施した研究成果の蓄積は多い。また、Cdの飲水、摂餌での長期投与実験による研究がある。しかし、ヒトの日常摂取レベルに相当する長期Cd曝露での腸管吸収や生体影響評価についての検討は多くない。特に、雌性動物の正常生理負荷(妊娠、出産、授乳負荷)を考慮したCd曝露の影響に関する詳細な検討は見あたらない。Cdの腸管からの吸収過程での化学形態の修飾、それに伴う生体内分布並びに生体影響の詳細な検討は多くない。

また、従来の環境汚染や職場におけるCdの急性?亜急性中毒の生体影響の結果から、日常のCd摂取レベルの生体影響を評価することには限界があると考えられる。すなわち、Cdの摂取による曝露量が低濃度になればなるほど、腸管組織での金属結合蛋白質メタロチオネイン(MT)の存在や、その誘導よるCdの化学形態の修飾、それにともなう体内分布の変化や、共存する栄養因子との相互作用等が、Cdの生体影響の修飾に作用することが考えられる。

Cdの腸管吸収率、Cdの摂取?蓄積量の適切な評価指標、雌性動物の妊娠負荷に対するCdの負荷的飾影響、母子間移行と生殖毒性影響等についても詳細な検討が必要である。

これらは、日常のCd摂取レベルの視点で生体影響の評価が必要であり、耐容摂取量設定について重要な今日的課題であると考えられる。(ICPS 1992, 太田2001, Ohta, H. et al. 2000, Ohta, Cherian, 1991, Rogers, et al. 1997, Kovacs, Kronenberg, 1997, Brzoska, et al, 1998, Bhattacharyya, et al. 2000, 太田、他. 2006)。

4.動物実験研究からヒトへの外挿、耐容摂取量推定の試み

Cdの定量経口投与(2~60mgCd/kg/day)した雌性ラットの腎機能、骨代謝機能に及ぼす影響を検討した結果、腎機能と骨代謝障害の発症はCdの曝露条件で異なり、骨代謝障害が腎機能障害の二次的障害でなくCdの骨代謝に及ぼす直接的影響を示唆する結果を得た。

この結果を基に、動物実験でのCd投与量に対する腎臓中Cd蓄積濃度(Ohta. et al. 2000)とヒトの臨床疫学で得られた腎臓皮質中Cd濃度との関係を検討し、ヒトへの外挿を考慮したCd経口投与量を設定し(Fig.1)、妊娠出産哺乳負荷とCd曝露の母体に及ぼす影響を検討した。母体の骨代謝は、哺乳負荷に加えCd曝露の付加的影響で大腿骨骨密度の有意な低下が認められた。

一方、ヒトの日常Cd摂取量と推定される実験群では、対照群と比較して有意差は認められなかった(Fig.2)。日常Cd摂取量の2倍程度と考えられるCd実験群(7~8μg/kg/day)で骨密度が有意に低下し、Cdの耐容摂取レベルの設定に、哺乳負荷を配慮する必要であることが示唆された。この時の腎臓中Cd濃度は妊娠哺乳負荷の有無による有意差は認められず、20~40μg/g 程度で、アミノ酸やNAG、そしてβ2MGの尿中への排泄が有意に増加した。これは従来の腎臓中Cdの臨界濃度200μg/gに比べ著しく低濃度であった。

この実験結果について、腎機能異常、骨代謝異常の種々の評価指標の変化を基に、米国環境保護庁が提供しているベンチマークドーズ(BMD)算定のコンピュータソフトを用いて、ヒトの日常Cd摂取の耐用摂取量の推定を試みた結果を紹介する。

5.まとめ 今日、産業職場や環境汚染による比較的高濃度のCd曝露による生体影響は激減し、日常生活でのCd摂取レベルの生体影響をどの様に評価するかが問題となっている。Cdの耐容摂取基準設定に寄与できる十分な研究成果の蓄積は十分なのか。諸外国の研究報告に対する日本のCdの基準値設定は妥当であるのか。従来の環境汚染によるCd曝露レベルでの研究成果から、日常生活でのCd摂取の健康影響のリスク評価は適切なのか。Cdによる健康影響の指標をどの様に、どのレベルで捉えるのかが問題である。細胞や動物を用いた実験研究とヒトを対象とした疫学研究のより現実的な接点を意識した研究が必要と考える。

参考資料

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第3回薬用植物セミナー「薬用植物による新たな都市農業の創出を目指して」が開催された
「情報:農と環境と医療 2号」で博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@薬学部附属薬用植物園の紹介をした。そこでは、薬用植物園の概要と農医連携の役割について以下のように記述した。

「全地球的な環境破壊による植物資源の消失から貴重な遺伝子資源を守るために、ヒマラヤやアマゾン産などの薬用資源のフィールド調査および栽培条件を検討し、植物組織培養技術による植物遺伝子資源の保存育成法を確立している。各保存植物の評価は、植物形態学的、化学的、免疫薬理学的評価に加えて遺伝子解析法により行っている。」

また、薬用植物園を農医連携のプラットホームとして捉える考え方も次のように記述した。「この薬用植物園は次のような重要なプラットホーム的な役割がある。この役割は、農と環境と医療を考える上でもっと深く検討する必要がある。1.市民のための医療関係団体との交流、2.薬草を含む「農業と市民農園」の創設、3.入院患者と薬草園の活用、4.薬草資源のインベントリー」

一方、「情報:農業と環境と医療 3号」では「新都市農業推進協定書の締結:北里学園と相模原市」と題して、北里学園理事長(柴 忠義)と相模原市長(小川勇夫)の間で、「新都市農業推進協定」が締結されたことを報告した。

これは、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@薬学部附属薬用植物園が新たに学外に設置するサテライト型モデル実験園を中心に、シンポジウムの開催など薬用植物の普及?啓発事業、薬用植物園の開放による薬用植物の栽培体験、講習?相談事業、薬用植物の研究成果を応用した栽培技術や加工?流通システムの開発など新たなアグリビジネスの創出事業を行うための協定である。この協定により、下溝?磯部地区にサテライト型モデル実験園(16a)として「北里サテライトガーデン」が開園された。

また、「情報:農業と環境と医療 20号」では「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@と相模原市の連携による地域産業の活性化に関する協定書」と題した情報を流した。これは平成18年10月10日、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@と相模原市が、地域における産業の活性化を図るための協力について協定を締結した情報である。

これまでも、「新都市農業推進協定」に基づいて「北里サテライトガーデン見学会」や「第1回薬用植物セミナー:薬用植物と新たな農への取り組み」、「第2回薬用植物セミナー:薬用植物による新たな都市農業の創出を目指して」が開催されている(参照、情報:農と環境と医療 7号、8号, 21号)。今回は、去る12月8日(土)に開催された「第3回薬用植物セミナー:薬用植物による新たな都市農業の創出を目指して」の要綱を紹介する。

なお、継続しているこのセミナーは、本学と相模原市が新たな都市農業の創出を目指して締結した「新都市農業推進協定」に基づき、市民に薬用植物を知ってもらうとともに、新たな農に対する関心を高め、健康?環境?新都市農業を視点とした新しい農業の振興を図るために開催しているものである。その開催要綱は以下の通りであった。

日 時:平成19年12月8日(土)午後1:00~
会 場:相模原市総合保健医療センター(ウェルネスさがみはら)7F 視聴覚室
対 象:一般市民、申込順、参加費無料
主 催:相模原市?博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@
講演プログラム

「北里サテライトガーデンの報告」博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@薬学部附属薬用植物園 准教授 福田達男
「農業と医療の連携と土の話」博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@副学長 陽 捷行
「身近な薬用植物:熱帯~暖温帯の植物たち」元(独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター種子島研究部研究リーダー 香月茂樹
中国製品の鉛汚染の実態:子供用装飾品と玩具
中国から輸出される食品や玩具の安全性に、多くの国が当惑している。「農と環境と医療」に関する情報を提供するこの冊子も、この問題を避けては通れない。「情報:農と環境と医療 31号」では、「中国産食品の実態:養殖ウナギ」と題して、養殖ウナギを中心にその詳細を報告した。今回は、ここ半年間に見聞された中国製の子供用装飾品や玩具などの鉛汚染の情報を時系列で追ってみる。なお、最後に紙数の許す限りで、鉛の環境基準値などを表示する。

1. 中国製輸入土鍋から鉛とカドミウムが検出(5月25日)

札幌市で販売された中国製の土鍋から調理中に鉛やカドミウムが漏れ出し、鍋を輸入した新潟県の陶磁器業者が在庫として残っていた300個を自主回収した。しかし、問題の鍋は2004年から今年2月までに2万2,000個輸入され、全国に出回ったままである。

2.米国で中国製の汽車の玩具が回収された(6月16日)

米国消費品安全委員会と玩具会社RC2は、塗装に使用されている塗料中に児童が中毒を起こす危険のある鉛があるとして、中国製の汽車の玩具「トーマス」1500台を回収した。委員会の報道官スコット?ボブソン氏は、これはRC2社が取り扱った1500台の木製の汽車の玩具に関して、世界中を対象範囲とした初めての回収通告であると説明した。

RC2社の声明には、2005年1月~2007年4月までに中国で生産された「Thomas&Friends Wooden Railway」の文字がある木製の汽車の表面26ヶ所の塗料に鉛が含まれていたとある。回収された製品は、米国内で販売している玩具の4%である。また、回収通告を出す前にこの塗料に含まれた鉛によって児童が中毒を起こしたという報告はないと強調している。

鉛は人間の健康を害する重金属の1つである。成長の盛んな時期の児童は、鉛の毒性に対し特に敏感である。鉛を含んだ玩具に児童が触れたあと、鉛は呼吸器と消化器官を通り抜け、体内に侵入し骨に蓄積する。また、血液の流れに乗り全身の器官へ行きわたり、下痢、貧血、嘔吐などの中毒反応を引き起こす。さらに児童の発育、知力、成長に大きな影響があるとして、米国では1978年から塗料に添加することが禁止されている。

委員会の統計によれば、2007年に彼らが回収通告した製品の60%は中国からの輸入品だった。米国RC2社は、すでにこの玩具を販売した小売店の店頭から関連商品を撤去した。この玩具を回収された消費者には、指定の店で安全なものと交換できるように手配したと伝えている。

3.米国で中国製玩具150万個が自主回収された(6月21日)

米国において、塗料に有害物質が混入されている中国製玩具が世界的な規模で自主回収された。その数は150万個に及ぶ。6月19日までに回収された24品目の玩具は、すべて中国で製造されたものだという。自主回収量は、過去5年間で2倍に増加した。

回収された玩具は、有名な「機関車トーマス」の「トーマス木製レールシリーズ」である。人体に有害な鉛が、これらの玩具の塗料に含まれているという。玩具に塗料をつける作業は、中国の工場で行われた。

ニューヨークタイムズによると、回収される多くの玩具は中国製品である。過去5年間に回収された中国製玩具は2倍に増え、昨年1年間だけで、467種類の玩具が回収された。

「中国品質報」によると、中国は世界最大の玩具輸出国である。玩具は100以上の国で発売されている。世界における70%以上の玩具が中国製で、米国が輸入している玩具の65%が中国製だという。

4.米国のマテル社が中国で製造した玩具を回収(8月2日)

米国最大の玩具メーカーであるマテル社は1日、中国で製造された約100万個の玩具を回収することを明らかにした。問題の玩具の塗料には、規定以上の鉛が含まれている可能性があるとしている。

マテルによると、回収するのは96万7,000個のプラスチック製玩具で、中国のメーカーが製造した。玩具に使われた鉛を含む塗料は認可されていないもので、規定に違反するという。また、米消費者製品安全委員会(CPSC)の発表によると、これらの玩具は5~8月に、全米の小売店で5~40ドルで販売された。マテル社は、影響のある製品の特定で小売店と協力しており、玩具を店頭から撤去したとしている。今後の入荷も差し止めたという。回収する玩具は世界全体ではおよそ150万個に及ぶ。

5.米国の玩具メーカーが約100万個の中国製玩具を回収(8月4日)

米国の玩具製造業者のマテル社は、全世界で96.7万件の中国産玩具を回収すると宣言した。回収の理由は「鉛の含有量が高すぎる」ことである。米国VOA(Voice of America)の報道によると、回収対象となる玩具はマテル社の子会社フィッシャープライス社が製造したもので、83種類に上る。

これらの玩具は、今年5月から米国市場で発売されていた。米消費品安全委員会によると、現時点までにこれらの玩具による事故は、まだ確認されていないという。マテル社の品質管理は従来から厳格であり、中国で製造した玩具も業界では、手本と見なされている。そのためか、今回の大規模玩具回収は業界を震撼させた。

6.中国製玩具が回収された。香港人オーナーが自殺(8月17日)

中国メディアの報道によると、規準を超える鉛を含む玩具の回収にともなって、関連する広東省の工場主が工場内で自殺した。また佛山利達玩具有限会社の香港人オーナーの張樹鴻は、工場の倉庫で自殺した。ともに、広東省広州市の地元紙「南方都市報」が報じている。

玩具に使用されているペンキの鉛量が規準を超えていたことから、利達会社は今月の初めにフィッシャープライスの親会社米国マテル社から、佛山で生産した96.7万個のフィッシャープライスブランドの玩具の回収を求められた。回収事件の影響で、中国国家品質検査総局は佛山利達会社の玩具の輸出をしばらく禁止すると公表した。

7.中国製の絵本も危険か?欧州印刷業界から懸念の声(9月2日)

オーストリア印刷およびメディア技術協会は、最新号の博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@リリースで塗料から基準値を超える鉛が検出されたと報道した。回収された中国製の玩具だけではなく、中国製のカレンダーも含まれていることを明らかにした。同協会は、ヨーロッパの市場に出回っている中国製の子供絵本にも同様な危険性があるとの懸念を示した。

「ドイチェ?ベレ放送局」によると、同協会のミシェル?ホエンアイガ主席は、「特に子どもの絵本は、子どもの注意力を高めるために、一般印刷のほかに、金色または銀色も使い、華やかに飾られており、様々な印刷技術を取り入れている。これらの絵本の多くは、シルクスクリーンで製作されている。特にアジアの場合、使用する塗料は表示義務がないが、健康を脅かす成分が含まれているかもしれない。我々はこれまでの報道に対して、不安を感じる」と懸念している。

同協会の博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@リリースによると、欧州印刷産業連合会(Intergraf)は少し前に、中国印刷業の発展についての研究報告を発表し、健康?安全および環境保護に関する効果的な規定とその執行状況についての情報は殆ど見つからないという。ホエンアイガ主席は、欧州連合の関連規定を輸入印刷製品に適用させるよう呼びかけた。

8.玩具メーカーのトイザらス社の中国製のお絵かきセットにも鉛(9月3日)

米国消費者製品安全委員会(CPSC)は30日、玩具小売り大手トイザらスが中国製のお絵かきセット約2万7,000個を自主回収すると発表した。クレヨンや色鉛筆、水彩絵の具などを収めるケースの印刷に使われたインクに有害物質の鉛が含まれていた。また水彩絵の具の一部にも基準値を超える鉛が入っていたという。

同製品は昨年10月から今年8月まで全米で、約20ドル(約2300円)で販売された。CPSCは同商品による被害者はまだ確認されていないとし、児童ができるだけ触れないよう勧告した。

9.米国で中国製ブレスレットで男児中毒、20万個の回収(9月26日)

ボストンがん慈善団体「フレンズ?オブ?メル?ファンデーション(Friends of Mel Foundation、FMF) 」は、販売したブレスレットが基準値以上の鉛を含有していたことから、過去2年間にさかのぼり20万個回収すると発表した。

米「ボストン?グローバル(Boston Global)」紙によると、FMFは今月9歳男児がブレスレットに含有する重金属?鉛を摂取したため、中毒症状が現れたという通報を電子メールで受け、「マサチューセッツ?マテリアルズ?リサーチ(以下、MMR)」という実験機関へ調査を委託し、ブレスレットの分析を行ったという。

MMR社によると、ブレスレットについているビーズは重金属の鉛を含んでいないが、ビーズを繋ぐ銀色のリングが高含量の鉛を有するという。FMFスポークスマンのジャッキー?ハスコビッツ氏によると、カラーのビーズは中国およびトルコから輸入したが、銀色のリングはすべて中国製である。

FMFは、ブレスレットは中国人経営の寧波金属加工公司(Ningbo Metal Manufacturing)から購入したとし、売買契約を結ぶ前に銀色のリングは重金属?鉛を含まないことを明記したと指摘した。

昨年ミネソタ州では、4歳の児童が基準値以上の鉛を含有する中国製ブレスレットを使用したため死亡したことから、リーボック社(Reebok International)は、児童運動靴におまけ商品として付けていたブレスレット30万個の回収を発表した。

10.ハロウィン商品に鉛(10月18日)

米国アシュタンド大学(オハイオ州)のジェフリー?ワイデンヘイマー教授が同州で販売されているハロウィン関連の22製品を検査したところ、フランケンシュタインの絵柄がついたカップから基準値の65倍の鉛が検出されたほか、キャンディーが入った魔女や骸骨柄のバケツの塗料からも35倍の鉛が検出された。いずれも中国製品である。

11.中国製ビーズ玩具を誤飲した幼児が一時的に昏睡状態(11月13日)

中国製ビーズ玩具に有毒物質が含まれ、米国と豪州で健康被害が確認されたため、米国消費者製品安全委員会(CPSC)は11月8日に回収を発表した。中国当局はその後、品質問題を認めた。誤って飲み込んだ幼児が一時的に昏睡状態に陥るなどの被害が米国と豪州で出ている。

米国側は、問題の玩具約420万個を回収した。AFP通信によると、CPSCは、化学物質を特定していないが、豪州で販売禁止になった類似の中国製玩具から、飲み込むと体内で、催眠導入剤「GHB」と似た物質が放出されることがわかった。

「中国国家質検総局」が11月10日、米国が回収した玩具とそのメーカーへの調査結果を公表、有毒物質の含有を認めた。中国当局の調査結果によれば、この種の玩具は軟化処理後の樹脂の原料で型を作っているという。製造過程において、毒性のあるグリコール系の物質を軟化剤として使用し、含有量は約14.5%に達する。

問題の玩具は、北米ではカナダのスピン?マスターズ社が「アクア?ドッツ」として製品化し、豪州や英国では「ビンディーズ」という商品名で販売されている。直径0.5センチのビーズを花や動物などの形に並べ、水をかけると、ビーズが互いに吸着して固まる。いずれも、中国メーカーが生産しており、40数カ国に輸出されているという。豪州では、2007年の「トイ?オブ?ザ?イヤー」に選ばれ、人気商品のひとつ。

米国では11月10日までに、少なくとも5人の子どもが問題の玩具を飲み込んだ後、昏睡状態に陥るなどの中毒症状を発し、病院で治療を受けたことが判明。豪州でも被害が確認され、政府は11月2日から販売禁止を命じた。

鉛の毒性

1.水?大気?土壌

水質環境基準値:0.01mg/l、水道水質基準:0.01mg/l、公共用水域への排水基準値:0.1mg/l、下水道基準値:0.1mg/l、土壌基準値:150mg/kg、大気排出基準:10mg/m3(鉛の二次精錬、製品用の溶鉱炉)、20mg/m3(鉛ガラス用の焼成炉、溶融炉)、30mg/m3(鉛等精錬用の焼結炉、溶鉱炉)

2.ヒトへの影響

1)ヒトへの曝露:食物、飲料水、大気、タバコ
鉛の1日の摂取量:0.11~0.5mg、消化器で10%吸収
 自らの摂取量:0.02mg/日
 摂取量>0.5mg~1mg、体内蓄積:体内の鉛の90%は骨に含まれる

2)急性毒性
 鉛の短時間大量曝露によって起きるが、非常にまれである。初期症状は口渇、消化器症状としては金属味がみられ、その後悪心、腹痛、嘔吐が続く。感覚異常症、疼痛そして筋力低下などの神経症状もあげられる。急性溶血のため貧血やヘモグロビン尿が認められる。
 可溶性鉛塩の経口致死量は10gといわれている。腹痛、下痢、血圧低下、乏尿、昏睡などもあるという。

3)慢性毒性
 鉛の高濃度の中毒症状は、貧血、消化器の障害、神経系の障害などがある。血液中濃度が0.4~0.5mg/lを超えて長期間曝露された場合に障害がみられる。典型的症状は鉛蒼白、貧血、鉛疝痛、伸筋麻痺、コプロポルフィリン尿があげられていたが、最近わが国ではこのような症例はほとんどみられない。胃腸管症状は鉛が胃腸管の平滑筋に作用して食欲不振、腹部不快感、便秘、腹痛などが起こる。末梢神経症状は神経筋症状、手首の伸筋麻痺による下垂手(鉛麻痺)や末梢神経伝導速度の軽度遅延などがある。

参考資料
  1. 大紀元:http://www.epochtimes.jp/jp/ssbd.php?f_page=first
  2. 産経新聞:2007年10月18日 化学物質の毒性

コラム:卒業論文発表会と盈科而進(えいかじしん)
平成19年11月21日に、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@獣医畜産学部獣医学科の卒業論文発表会に参加する機会を得た。この発表会は、4年間教育と修士課程積み上げの6年間(昭和58年~63年)と、その後の6年生一貫教育(平成元年~)にまたがるもので、通算24年間に及ぶ歴史をもつ。学生を教育する教師の情熱や努力と、真摯に学問に向き合う学生の気概や態度が焦点を結ぶ貴重な場面である。

学問の厳しさの一端を垣間見るこの場面は、学生にとって貴重な経験になるであろう。社会に出る学生には、ほろ苦い青春の思い出に、学問で生きていこうとする学生には、まさに学問を進めるための出発点ともいえる。このような場面が、それぞれの学部で今から始まると想うと、体の底から歓びが湧きたつ。

このとき、筆者の42年前の記憶が蘇った。当時は、発売されて間もないマジックボールペンで1メートル四方のざら紙に研究成果を書いた。研究成果が書かれたざら紙の両先には、小さな紙片を糊付けした。研究成果が書かれた数枚のざら紙は、紙片を束ねて黒板に押しピンで止めた。これらのざら紙を一枚一枚はがしながら、研究成果を発表した。未熟な学生の頃の淡い思い出である。

今はどうだ。誰も彼も発表手法の近代武器と思われるパワーポイントを活用して、研究成果を分かりやすく綺麗な図表にして、流暢に成果を発表する。なかには、立派な学者の発表技術より長けたものもある。パワーポイントを使った表現技術だけは、両者の間で遜色がないような気もする。これは技術の勝利であって、必ずしも内容の勝利ではない。

芭蕉は、「格に入り格を出でて、はじめて自在を得べし」と言った。芭蕉のこの言葉のように、学生は格に入っただけである。今に格を出でて、このスタイルを肝に銘じて、はじめて自在を得るのであろう。

話は変わる。熊本出身の医学関係の泰斗は、北里柴三郎である。このことは、周知の事実である。これに呼応して、熊本出身の農学関係の泰斗は、横井時敬(よこいときよし)である。このことは、農学を知る人にとって周知の事実である。

近代農学の始祖といわれる横井時敬は、万延元年(1860)肥後国熊本城下の藩士横井久右衛門時教の四男として生まれた。北里柴三郎が生まれた年(1853)の7年後である。幼名を豊彦という。15歳で熊本洋学校を卒業し、ここでアメリカ人教師のジェーンズの助手になって、後進の指導に当たった。20歳の明治13年(1880)、東京駒場農学校農学本科を卒業し、駒場農学校農芸化学へ入校した。

その後、兵庫県植物園長兼農業通信員となった。明治18年(1885)から福岡県農学校教諭となり、この間に「種籾の塩水選種法」を考案した。明治27年(1894)に東京帝国大学農科大学教授、明治44年(1911)から昭和2年(1927)まで東京農業大学学長を務めた。大正11年(1922)には東京帝国大学を定年で退職した。

この間、作物学および農業経済学の大家として活躍するのみならず、農業教育者、社会啓蒙家として、日本の社会のために大きく寄与した。特に、氏の言う「実学思想」は、彼が残した多くの「言葉」の中によく表れている。

曰く、「一国の元気は中産階級にあり」、「農民たる者は国民の模範的階級たるべきものと心得、武士道の相続性を以って自ら任じ、自重の心掛け肝要のこと」、「人物を畑に還す」、「農学栄えて農業亡ぶ」、「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」。とくに最後の二つの「言葉」は、多くの農業関係者の知るところである。

このことからも分かるように、北里柴三郎と横井時敬には「実学思想」を始め多くの点で類似した姿がある。そのことは、いつかの機会にこの「情報」に書く予定でいる。ここでは横井時敬の書について触れ、卒業論文発表会と関連づけたい。

横井は書道の大家でもあった。政治家の後藤新平は、現在の能書家として誰を挙げるかと聞かれ、躊躇なく「それは、犬養木堂(毅)と横井虚遊(時敬)だろう。特に虚遊の仮名文字は絶品」と答えたという。誰かが、同僚の農芸化学者古在由直(2代目農事試験場長、千葉大学学長古在豊樹氏は由直の孫)のほうが時敬より字がうまい、と言ったのを聞いて悔しがり、横井は土肥樵石について本格的に字を習ったと言われている。

さて、農業研究の基である農事試験場(明治6、1893年設立)は、幾星霜の時を経て今では独立行政法人農業境技術研究所に変遷したが、この研究所の理事長室に古い掛字がある。「盈科而進 農学博士横井時敬」と書かれている。横井時敬の揮毫である。

水の流れは、科(あな)に満ちて(盈)から先の方に流れていく。転じて、学問をするにも順を追って進むべきであると解釈される。学問も一足とびに高いところに至ろうとせず、順を追ってすすめるべきであるとも解釈される。卒業論文を発表した学生たちに与えたい言葉ではある。

参照:http://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/ko_tame18.html

漢籍「孟子」離下に、「原泉混混不舎昼夜盈科而後進放乎四海(原泉混混トシテ昼夜ヲ舎カズ科ニ盈チテ後進ミ四海ニ放ガル)」とある。
*本情報誌の無断転用はお断りします。
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長通信
情報:農と環境と医療34号
編集?発行 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室
発行日 2008年1月1日