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人工股関節置換術とは、傷ついた股関節を、関節の代替として働くインプラントと呼ばれる人工股関節部品に置き換える手術です。通常、医師は特殊な精密器具を使って骨の損傷面を取り除き、そこに代わりのインプラントを固定します。

人工股関節置換術

人工股関節は、金属製のステムとボールとソケット、そしてソケットの内側にはめ込むシェルで構成されています。
シェルは、超高分子量ポリエチレンという素材からつくられ、軟骨の役目を果たします。金属のボールがソケットに組み込まれれば、スムーズな動きが得られます。

最小侵襲(MIS)人工膝関節置換術

MIS(エム?アイ?エス)とは、筋肉や軟部組織(皮膚等)への負担をできるだけ最小限にする新しい人工膝関節置換術のことです。
皮膚切開をできるだけ小さくすることで、痛みの軽減や術後リハビリの早期開始、早期退院、そして早期社会復帰をめざしています。

MISの特長

※症状によって個人差があります。

ポイント1:手術後の傷跡が小さくなります。

従来の手術に比べ小切開手術は約半分の傷跡で、場所も目立ちにくくなります。
一般的な手術方法では15cmから20cmもの大きな皮膚切開を行い、筋肉を大きく切り開きながら骨に達して、人工股関節を設置しています。患者さまの関節の変形の程度にもよりますが、MIS手術は、8cm~12cm程度の皮膚切開で従来と同じ人工股関節の手術ができるという画期的な方法です。

手術後の傷跡が小さくなります。

ポイント2:入院期間が短くなります。

小さく切開するので軟部組織(皮膚など)や筋肉も早く治癒し、入院期間の短縮が期待できます。
MIS手術では2週間程度で退院(早期退院)が可能となり、従来の手術を受けた場合と比べて、早く普通の生活に戻ることが期待できます。院内感染などの合併症を引き起こさないためにも、入院生活は短いほうがよいといえるのです。

ポイント3:リハビリを早く行うことができます。

MIS手術では傷が小さくて痛みも少なく、筋肉や軟部組織への負担が少ないことから、リハビリを早期に開始することが可能になります。歩行訓練もスムーズに始められるので、車椅子や、歩行器、松葉杖のいずれかを使用して、早期に自力でトイレや洗面に行くことが可能になります。仕事や日常の生活に早く戻ることで、入院費を含め負担を軽減できます。

入院から退院まで

手術前

インフォームドコンセント

医師からインフォームドコンセントと呼ばれる資料を使って術前説明があります。

インフォームドコンセントのおもな内容

  • 手術の目的
  • 手術によって期待できる効果
  • 手術方法
  • 術後の注意点
  • 麻酔の危険性について
  • 輸血について
  • 合併症について

※合併症など
麻酔のリスク、感染、深部静脈血栓症、肺塞栓症、出血ならびに輸血のリスク、関節可動域制限、ゆるみ、骨折、金属セメントアレルギー など

入院

手術の前に、必要な検査を受けます。服用している薬があれば必ず病院のスタッフに伝えてください。手術前日は21:00以降の飲食ができなくなります。

術前検査

手術のための血液、尿、心電図、心臓超音波検査(心エコー)、胸部X下肢線、下肢エコーによる深部静脈血栓チェック、人工関節アライメント計測用CT、活動性評価

手術準備

当日、腕に小さなチューブ(静脈ライン)を挿入します。このチューブは、手術中に抗生物質やその他のくすりを投与するのに使います。

手術

手術室に入ると麻酔が行われます。麻酔には全身麻酔と局所麻酔があります。
太ももの皮膚を切開し、損傷骨を切除してインプラント(人工関節)を骨に固定します。インプラントがしっかり固定され、十分に機能することを確かめてから、切開した部分を縫合します。

手術終了

手術したところから自然に生じてくる液を外へ流し出すために、専用の排液管(ドレーン)を傷口に挿入します。その後、傷口を滅菌包帯でおおい、回復室に移ります。
手術にかかる時間はおよそ2~4時間で、個々の状況によって変わります。

※輸血について
手術中および手術後には、輸血を必要とする可能性があります。
最近では、手術の前に自分の血液を採っておき、手術後にそれを輸血する方法(自己血輸血)や、手術中に出血した血液を専用の器械でろ過して、体内に戻す方法などをとる場合もあります。

手術後

麻酔が覚めてくると、ゆっくりと意識が回復してきます。手術直後の痛みを取り除くため、痛み止めの薬を使います。脱臼防止用まくらを脚の間に置いて、関節の位置を保ちます。
完全に麻酔が覚めたら、病室へ戻ります。手術直後は頻繁に血圧や体温を測ります。
血栓予防の後凝固剤投与も行います。

リハビリ

新しい人工股関節周囲の筋肉を強化し、可動域を回復させるために、徐々にリハビリを始めます。
基本的に手術の当日~2日目までにリハビリを始めます。理学療法士が最適な運動を行えるようサポートします。

リハビリの種類

病室で

  • ベッドの端に腰掛け、脚を下に垂らす
  • 歩行器を使った歩行訓練

リハビリ訓練室で

  • 平行棒を使った歩行訓練
  • 松葉杖、杖を使った歩行訓練
  • 階段を上る訓練

リハビリのプログラム例

  • ベッド上で足に力を入れるなど簡単な運動
  • ベッドの上で上半身を起こす
  • ベッドの端に座る練習

この頃には、看護師や理学療法士の介助で車椅子に乗ったり、手洗いに行けるようになります。

リハビリ訓練室で本格的なリハビリ、平行棒を使った歩行訓練、歩行器を使った歩行訓練、杖を使った歩行訓練、階段を上り下りする訓練

退院

回復が十分であると医師が判断したら、まもなく退院することができます。通常、退院する前に包帯を外して抜糸します。

Q&A

Q.入院期間はどのくらいですか?

症例により個人差はありますが、おおよそ2~6週間程度です。

Q.手術後、どのぐらいで日常的な動作ができるようになりますか?

手術後3~5カ月までには、車を運転できるぐらいまでに回復します。

Q.痛みはなくなりますか?

退院後2~3カ月でほとんどの場合、痛みが解消し、多くの日常的な動作ができるようになります。

Q.手術後、日常生活で制限はありますか?

インプラントの脱臼を防ぐため、以下のような制限があります。

  • 身体がぶつかり合うようなスポーツ
  • 関節を無理に曲げたり、伸ばしたりする動作
  • 和式トイレの使用

これらの制限を除けば、通常の日常生活にはほとんど支障がありません。散歩やショッピング、旅行、ハイキングなど、手術前には股関節が痛くて楽しめなかったことでも、手術後には楽しむことができるはずです。水泳やゴルフといった運動もできます。

Q.インプラントはどのくらいもちますか?

個人差はありますが、海外の学術文献によると、95%の人が15年以上の長期にわたって、インプラントを維持できているとの臨床結果が報告されています。最近のインプラントは、製品の研究も進み、さらに優れた臨床結果も期待できるようになってきました。インプラントを長持ちさせるために以下の事柄に留意し、あまり無理をせず、新しい関節と上手に付き合っていくことが大切です。

  • 適切な体重を維持する
  • 新たなスポーツや活動を始める前に主治医に相談する。
  • 重い物をくりかえし持ち上げるようなことを避ける。
  • ジョギングやスキー、動きの激しいエアロビクスなど、体をねじったり、「衝撃荷重」がかかるようなスポーツを避ける。
  • 中腰の姿勢をしない。
  • 低い座面や低い椅子を避ける。