動物資源科学科

新薬の研究開発-実験に望む姿勢は卒論研究から

私は現在、日本たばこ産業の医薬総合研究所安全性研究所に勤務し、新薬の研究開発に携わっています。「新薬の研究開発」というと、化学の世界を想像する人が多いかもしれませんが、実のところ獣医師や動物科学などの生命科学を学んだ人達が非常に多く活躍しています。

私が所属する安全性研究所は、医薬品候補の化合物の毒性を、細胞や動物を用いて調べています。実際に実験動物に化合物を投与し、その影響を精査することで、ヒトで起こる可能性のある副作用(リスク)を予測し、化合物に期待される効果(ベネフィット)とリスクの乖離やリスクを回避する手段などを研究しています。万が一にも薬害を起こしてはいけません。科学的に立証する力と責任感、使命感が必要なプロフェッショナルな仕事です。

さて、私の母校、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@畜産学科(現 動物資源科学科)では、旧来より講義や実習を通して動物福祉の考え方を実践する背景がありました。所属していた家畜飼育学教室(現 動物飼育管理学研究室)では、羊の分娩やその介護、動物たちの世話を日夜取り組んでおり、言葉にすると難しい動物福祉の理念を全身で経験する機会に恵まれました。教員の先生方も、まるで自分の子供のように(あるいはそれ以上に)動物たちを可愛がられていましたし、学生たちも先生方の姿勢に強く影響されました。産業動物や実験動物はペットではありません。ややもすると実験に供する動物たちに情が移り、実験の目的が果たせなくなります。「しっかりとした実験目的をもって動物と触れること」が、先生方と過ごした大学生活で学んだ一番大事なことだったような気がします。

卒業研究はその当時、宮城県にあった学部附属牡鹿牧場に同じ研究室の男3人が泊まりこみで行いました。時間と労力、それにお金ばかりかかった卒業研究で、期待していた大きな成果は得られなかったかもしれませんが、実験の背景には壮大な大目標があり、地球規模の大きなチャレンジをしているんだという誇りをもってやり遂げたのを覚えています。

大学で学んだり経験したことは、今の仕事でも十分に役に立っています。実験目的と適正な実験計画の立案、そして動物福祉の理念を十分に踏まえた研究の実践、どれをとっても大学で学んだり経験したことがベースになっていると思います。十和田キャンパスでは学生は皆一人暮らしでした。これも一人の人間として自立出来た大きな要因だったと思います。自分で考えて行動する力、困ったときは仲間を最大限に生かす力、社会に出るとどれも必要な素養ですが、まさに十和田キャンパスでの暮らしで養われたのではないかと思います。

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