動物資源科学科

人の役に立ちたくて「医療の現場」に

私は現在、生殖医療の現場で体外受精を行う胚培養士?エンブリオロジストという仕事をしております。私がこの仕事を目指したきっかけは、希少動物の人工繁殖に携わりたいと言う考えから家畜育種?繁殖学研究室(現:動物生殖学研究室)を専攻したことから始まっています。

就職活動では希少動物の繁殖に関われる全国の動物園?水族館に手紙を書いては訪問し希望する求人を探して就職活動を1年ほど行いましたが全て空振りに終わりました。今思えば当然の結果だと思います。私の就職に対する希望は「興味を持っていた体外受精?顕微授精により絶滅の危機に瀕している希少動物の人工繁殖に直接携われる職種に就きたい」と言うとても限定的なものでした。夢だけを追い求めているまだまだ若い人間だったようです。その当時、それを専門とする職種などありませんでした。しかし、この就職活動を通じ全国の希少動物を人工繁殖させようとするキーパーさんと知り合うことができました。その時にあるキーパーさんに言われた言葉で今でも覚えていることがあります。「あなたが仕事にしたい職種は日本では10年早かった。」希望の職種での就職活動が絶望的になったそんな時に恩師である福田芳詔前教授から「その希望を持ち続けていれば、どこかで希少動物の繁殖に間接的にでも携われる日が来るはず」と希望を与えてもらいました。

それから私の仕事?就職に対する考え方は一気に変わっていきました。私の希望であった「体外受精?顕微授精の研究を活かせる仕事」と言うことは変わらず、新たに加わったのが「人の役に立ちたい」でした。そんな時に運命的な出会いで生殖医療の現場で人の体外受精を担っている「胚培養士?エンブリオロジスト」と言う求人に出会いました。当時はこの職種を示す胚培養士?エンブリオロジストと言う言葉はなく、培養室スタッフと言っていました。就職先は産婦人科で畜産学科からは全くレールのない就職先でした。道を変えた就職活動で運命的に出会った就職先を1発で決めました。その後は朝から晩まで休むことなく毎日研究室へ通い研究を続けました。毎朝6時半には研究室に向かいマウスの体外受精に関する研究を行い、マウスの世話と次の実験の準備、そしてマウスの注射を毎日続けていました。研究室では徹底的に体外受精について学びました。毎日の研究で自然と培養室の管理や培養液の作製そして各技術が身についたと言うのが本当の所でした。

この期間を経て実際に人の不妊治療を行う培養室へ就職したわけですが、私には仕事の内容や職場について何も先入観が無かった?持てなかったのが救いでした。入職したクリニックは産婦人科ですから男性スタッフは私以外に医師である院長しかおりませんでした。医療資格を持たない畜産学科卒業の男性の新入社員にスタッフも患者も皆困惑していたのは当然だったと思います。この時に私は体外受精や顕微授精よりも先に、とてもデリケートな問題を治療する「医療の現場」にいるということを強烈に印象付けられたのを記憶しています。就職してまず私が目指したのは「培養室スタッフに」なる前に「医療従事者」になることでした。クリニックの中で行われることは何でも行いました。何でも行うことでスタッフや患者から私の存在が認められ婦人科で男性である私が仕事をする環境がどんどんと整っていきました。私は生殖医療の現場において体外受精や顕微授精で人の役に立ちたいという気持ちを抱きつつも、今いる現場ではまず優先することは医療従事者であり治療を求める患者の治療に携わるということだと感じました。あれから十数年、毎日が緊張の連続で常に技術の鍛錬と最新技術や情報の習得を行いながら生殖医療の最前線にいます。

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これから同じ分野への就職を希望されている皆さんへ

胚培養士?エンブリオロジストと言う職種には国家資格が無いことから、基本的には誰にでも就ける仕事です。しかし、誰にでもできる仕事ではないと思います。生命の源になる卵子や精子そして受精卵を扱う仕事には高い倫理観が必要で、ミスは絶対に許されません。入職1年間での離職率も4割を超えるほど肉体的にも精神的にも過酷な職業です。研究員でもなければ研究職でもありません。

それでも、私はこの仕事に出会えて本当に良かったと感じています。肉体的にも精神的にも休まることはありませんが私たち培養室スタッフの技術を求めて治療に臨む患者のために生殖医療の最前線にいることを誇りに思っています。

最後に恩師である福田前教授からの励ましの言葉で「いずれ希少動物の繁殖にも携われる」と言われ、さらにキーパーさんから「日本では10年早い」と言われてから12年が経ちました。今の時代は動物に優しく希少動物をいたわる環境が整い間接的に人工繁殖にも関われています。先人のアドバイスの通り時代も変わってきました。ありがとうございました。

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