学内広報誌
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(左から)

医療安全管理学 助教

婦川 貴博

2012年3月薬学科(6年制)卒業
2019年6月から薬学部寄附講座「薬剤師地域連携講座」特任助教
2022年4月から現職

臨床薬学教育部門 助教

岡村 央

2004年3月薬学科(4年制)卒業
2020年10月から現職

地域医療薬学 教授

根岸 健一

1994年3月薬学科(4年制)卒業
2000年3月薬学研究科薬学専攻博士課程修了
2023年4月から現職

地域医療薬学 助教

森 大輝

2016年3月薬学科(6年制)卒業
2023年4月から現職

薬学教育モデル?コア?カリキュラムの改訂などにより薬学教育はさらに進化しようとしています。
そうした中で、本学部?本研究科を卒業?修了し、近年、本学部の教員となった方の座談会を通して本学部の強みや将来への期待を伺いました。
また、自身の経験をもとに力を入れたい教育など、教員としての目標も語っていただきました。

4年制と6年制の卒業生それぞれが感じた博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@薬学部の強み

根岸
本日はお集まりいただきありがとうございます。最初に本学部入職までの経緯など、簡単な自己紹介をお願いできればと思います。私が入学したのは本学部の臨床薬学教育の黎明期で、ケンタッキー大学でPharm.D.の学位を取得した小宮山貴子先生(現 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@名誉教授)を中心に先進的な薬学教育の導入が始まった頃です。その中で私は博士課程まで進んで本学初の臨床薬学の博士号を取得し、臨床薬学の研究室で助手を務めました。さらに2つの大学の薬学部で講師、准教授として教育に従事した後、2023年に退職された吉山友二先生(現 薬学部特任教授)に代わって地域医療薬学の教授に就任しました。
婦川
私は薬学科6年制の1期生で、卒業後は、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@病院で薬剤師レジデントを経験しました。その後は薬局併設のドラッグストアチェーン、保険薬局に勤務して管理薬剤師や教育長なども経験し、本学部の寄附講座特任助教を経て、2022年に医療安全管理学の助教に移籍になりました。
岡村
大学では英語学を学んで製薬会社に就職しましたが、薬剤師の仕事に興味を持つようになり、学士編入で本学部に入学しました。卒業後は都内の総合病院や横浜市の大学病院で薬剤師に関わる部署はひと通り経験した後、本学部とご縁があって、2020年から臨床薬学教育部門の助教を務めています。
森 
私は保険薬局を経営する会社に7年間勤務しました。薬局の在宅医療専門の部署、新入社員の教育担当のほか、地域密着の薬局では管理薬剤師も務めました。さらに指導薬剤師の資格も取得して薬剤師教育への関心が高まった頃、本学部から連絡をいただき、2023年に地域医療薬学の助教になりました。
根岸
皆さんの経歴はさまざまですが、卒業生として本学部で学んでよかったと思うのはどんな点でしょうか?
岡村
私は薬剤師の資格取得が目的で学士編入をしたので、北里に特段思い入れがあった訳ではありません。しかし、在学中に薬学への気概を持たれる多くの先生方に学んだことで、本学部に対する愛着や誇りが醸成されていったと思います。
森 
岡村先生が言われるように先生方が素晴らしかったことに加え、友人との強いつながりが生まれる点も本学部の魅力ではないでしょうか。社会に出ると病院、薬局、製薬会社などそれぞれの立場に分かれますが、今でもそうした利害関係を超えた交流が続けられる関係が作れたことが良かったですね。
婦川
私の頃は入学後に6年制か4年制かを選べる仕組みでした。当初は研究志向で学部4年+修士2年の課程を考えていましたが、臨床に関する充実した講義や実習のおかげで「4年で卒業してはもったいない」と感じ6年制に進みました。これからの薬剤師にはコミュニケーション能力が重要であると学び、在学中からこれを磨く努力も始めたので、私自身を変えたという点で本学部での経験は大きかったと思います。

薬学部6年制教育の開始当初から先進的な臨床薬学教育を行っていた

根岸
今回は臨床系の教員による座談会ですから、皆さんが薬学科の臨床薬学教育をどう捉えているかも伺えますか?
岡村
根岸先生が経験されたように、薬学科として日本で臨床薬学教育にいち早く取り組んだ点は強みですし、現在もそうした素養を持った学生が多く集まっていると感じています。
婦川
私のときは6年制が始まったばかりで、プラス2年を如何に価値あるものにするか強く意識していました。現在は6年制が定着して、北里に限らずどの大学の学生も6年間で学ぶという意識に変わり、臨床実習に対するモチベーションも変化したように思います。
岡村
確かに私がいた病院でも、6年制になって数年は実習に対して今よりもっと意欲的な学生が多かったようですね。森薬局実習では、目指す薬剤師像のない学生が多いと感じました。現場を経験しながら、将来のイメージを持って実習に臨むことで得るものは増えると思います。
根岸
現場での感想としては、「6年制で修士と同等の学生が実習に来るかと思ったら少し違った」という感じでしょうか。それも無理はなく、6年制が始まった当初、5、6年次に該当する臨床薬学教育のノウハウを持つ大学はあまり多くなかったと思いますね。私が修士課程で医療現場で教育を受けたこと自体、当時は、まだ珍しかったのです。そうした実践的な環境の中で学べるのも本学部の特徴ではないでしょうか。

フラットな素地に強みをプラスする次世代を見据えた教育も必要

根岸
では実際に教員になって、本学部の教育内容や今の学生についてはどんなふうに感じていますか?
婦川
自分の学生時代との比較になりますが、講義内容に加えて学祖?北里柴三郎先生のことを詳しく教えていただいた檀原宏文先生(現 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@名誉教授)をはじめ、当時は個性的な先生が多く、それが北里のカラーになっていたように思います。一方、自分で講義を担当してみると教えるべき内容が沢山ある中、独自のカラーを出すのは難しく、自分はユニークな先生方に教わったのだと実感します。
森 
教育内容とは少し離れますが、北里は医療系学部も多い生命科学の総合大学で、多様な分野の友人が作れることも魅力の一つだと思います。医療のことを熱く語っても真面目に受け止めてもらえる環境の中で、ぜひ自分の薬剤師としての将来像を明確にして、病院?薬局実習を受けて卒業してほしいですし、教員としてもそうした学生を育てたいと考えています。
根岸
私自身の見方では、北里は他大学に比べて無味無臭というかフラットな感覚を持ち、知識や将来の志向もオールラウンダーな学生が多いと思っています。ただ、その中に反骨精神や不撓不屈、叡智と実践といった北里柴三郎先生のスピリットがすり込まれていることにも北里らしさを感じますね。
岡村
根岸先生の「無味無臭」という言葉には若干棘も感じますが(笑)、私も病院にいたとき、確かに北里の学生については当たり外れがなく、安定していると感じていました。
婦川
私は薬局をサポートするラウンダーをやっていたとき、受け入れる薬局の方に「北里の卒業なら大丈夫。任せられる」とよく言われました。安定感があるとか失敗しにくいとか、そう評価されていたのだと、先生方のお話を聞いて今になって分かりました。
岡村
安定して実力が発揮できる人材育成が本学部の強みなのでしょうが、裏を返せば「飛び抜けた点が見当たらない」という意味。AIの導入などで薬剤師の業務が大きく変化する中で、フラットな安定感だけでは物足りないのではないでしょうか。
根岸
その意味では、いろいろな特色を持たせられる素地を持つ学生を育てられる点が本学部の強みで、今後は学生自身が自分の興味や将来の志向に合わせて色付けしていくことが大事になるでしょう。もちろん、私たちもそのための教育や個性を伸ばすサポートを充実させる必要があると思いますね。

病院があるキャンパスは北里のメリット
臨床を経た卒業生が教えるのも心強い

根岸
皆さんは病院、薬局、在宅など異なるバックボーンをお持ちです。座談会の最後に、そうしたご経験を生かしてこれから薬学部で目指したい教育についてお聞かせください。
岡村
病院?薬局実習に来る学生で気になったのは、与えられた問題に対応するのは得意でも、患者さんごとの問題を自ら抽出して解決策を探るような応用は苦手という点です。ただ、11週間の実習中に実践力を身につけるのは難しいので、できれば実習に行くまでに「患者さんに対してどのように考えるべきか」という心構えや視点を養う機会が作れたらと思います。そして私の約16年に及ぶ病院薬剤師の経験、文系大学を卒業して得られた広い視野をもとに、本当に臨床で必要とする薬剤師の能力を身につけさせる教育に力を入れたいですね。
森 
私の目標は先ほども話したように、学生自身に自分がなりたい薬剤師像を明確にしてもらうことです。ただ、低学年すぎると仕事についての情報が足りないですし、高学年だと病院?薬局実習で忙しくなってしまいます。個人的には3年次くらいに病院や薬局を見学し、その職場や働いている薬剤師に興味を持ったら、継続して現場とコンタクトを取って詳しく知っていくような機会を設けられたらと思います。そして薬剤師国家試験の合格だけでなく、なりたい薬剤師像に向けて勉強を頑張るといったモチベーションにもつながればと考えています。
婦川
私自身はこんな学生を育てたいという明確なイメージはあまりなくて。というのもゴールを設けると、教育がそこで終わるように思うからです。将来予測が難しいVUCAの時代において、変わっていく病院や薬局の薬剤師業務に合わせて自らを変えるには、将来も学び続けることが重要でしょう。ですから学生が卒業して第一線で活躍する10年後、20年後も成長を続けてくれるよう、学生の個性や適性を生かしつつ、社会に出ても成長する大切さも伝える教育をしたいと考えています。
森 
婦川先生の話を伺って、本学部は在学中の6年間は非常に面倒見がいいのに、卒業後のつながりまでうまくフォローしきれてないように思いました。薬学部の同窓会組織の薬友会、生涯学習委員会の主催する生涯学習プログラムなどはあるものの、やはり卒業すると大学とのつながりは薄まりますから。できれば薬学部あるいは博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@にもっと愛着を持ってもらい、大学と積極的につながることで、卒業生自体も何か活躍の場が広がるような関係を築いていけたらと思います。
根岸
定員が多いため、「これから薬剤師としてどうあるべきか」といった考えで、1年次から6年次まで一つの軸で貫くような教育はやりにくいことがあるように感じます。とはいえ、フラットな素地に個性をプラスした人材を育てるには、教育体制のメリハリなど何か工夫が求められてくるでしょう。
婦川
その一つとして、低学年から臨床系の教員や薬剤師が講義?実習にもっと深く関わることが重要ではないでしょうか。病院?薬局実習で臨床の厳しさを教わっても、学生にはギャップが大きすぎて対処しようがないと思いますから。
岡村
私たちを含め、薬剤師として臨床を経験した教員は、病院では薬局では、それぞれこういう薬剤師を求めていると学生に伝え続けることも必要になるでしょうね。
根岸
本学部は1年次は相模原、2年次からは白金と6年間ずっと病院を併設したキャンパスで過ごすので、学生も臨床系の話を現実味を持って受け止められると思います。しかも、そうした環境で育った学生が医療現場で働いた上で、教員として戻ってくるのも心強いですよね。今後は脱コロナで教員同士が顔を合わせて話す機会も増えてきます。今日のようにじっくりと話し合って北里の教育をさらに良くしていきたいですね。