第488回獣医学科セミナー<ベスト論文2022>「臓器由来細胞外マトリックスによる生体内での腎臓再生」演者:田島 一樹 先生 (小動物第2内科学研究室)

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2023-06-22
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17:00
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A棟3階 A31講義室

イベントの概要

以下の通り、第488回獣医学科セミナー<ベスト論文2022>を開催します。

多数ご参集くださいますようお願い申し上げます。

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第488回獣医学科セミナー<ベスト論文2022>

【開催日】 6月22日(木)

【会 場】 A棟3階 A31講義室

【時 間】 17:00~

【演 者】 田島 一樹 先生 (小動物第2内科学研究室)

【タイトル】 ?臓器由来細胞外マトリックスによる生体内での腎臓再生

【要 旨】

細胞外マトリックスは細胞の生着、増殖、分化に非常に有用である。細胞外マトリックスの構成成分は種々のタンパク質であり、その組成は臓器毎、さらには同じ臓器でも部位によって異なっていることが知られている。そのため、現在の技術では臓器の細胞外マトリックスを人工的に完全に再現することは不可能である。我々は細胞成分を除去し、細胞外マトリックスのみとする脱細胞化の技術を用いて、臓器特異的な細胞外マトリックスを作出する手法を確立した。この臓器特異的な細胞外マトリックスは、ターゲットの臓器における細胞にとって最適な環境となる。そこで今回、生体内で再生することのない腎臓に対し、細胞外マトリックスを付与することで腎臓再生を試みた。その結果、糸球体構造や尿細管構造の再生がみられ、さらには再生した臓器内部に血流や尿の生成といったファンクションの確認をすることができた。本研究によって再生しない臓器においても、最適な細胞外マトリックスの付与によって再生できる可能性が示唆された。

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【選出理由】

2022年1月?12月までの間において獣医学科の教員がFirstまたはCorresponding authorとして発表した論文の中で、セミナー委員会における選考の結果、田島先生らによる論文を以下の理由によりベスト論文2022に選出いたしました。

Tajima K. et al., NPJ Regen. Med., 2022

An organ-derived extracellular matrix triggers in situ kidney regeneration in a preclinical model

https://www.nature.com/articles/s41536-022-00213-y

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ブタの腎臓由来の細胞がマトリックスを腎部分切除した表面に移植し、ネフロンや血流の再生を認めたという論文である。

再生医療という先進的な分野で、動物モデルを用いて得られた非常に貴重なデータであると感じた。

豚か無菌的に採取され無細胞(脱細胞?)化した腎臓が、部分切除された腎臓に移植することで機能を取り戻すことを証明した。無細胞化および移植後の機能回復を組織化学的、関連遺伝子の発現、バイオマーカー、および臨床的アプローチにより評価することで証明している。豚というヒトに近いモデルを用いて、そのアプローチの適切さと移植腎の機能が証明されており、移植分野での成功が強く期待できる。

部分切除を行った腎臓に脱細胞処理した腎臓を移植すると、Matrix内に血液供給と糸球体や尿細管が形成されることが示されており、再生医療の発展に寄与する重要な研究であると感じました。腎機能がどの程度まで回復するのか、どの程度の規模の切除まで耐えうるのか、さらなる発展が期待される論文だと感じました。

?脱細胞化処理したブタ細胞外マトリックスを部分的に切除した腎臓に縫合?移植した結果、線維化することなく移植したECMを基盤として腎臓構造が再生される事を報告した論文

?マトリックスによる自己修復能力によって損傷した臓器の構造的?機能的再生を誘導することができることを示唆するデータである、今後の腎臓再生?治療法の確立に貢献する論文と考えられる。

?個人的には、ECMの移植によって組織的に復元された腎臓において血流は確認されていましたが、どの程度腎機能が回復されているのか、正常な腎臓がどの程度残っていれば、組織的に復元されるのか、糸球体や尿細管などそれぞれの構造の足場となるECMの構成がどのようにちがうのか(それによって分化誘導される細胞が異なってくるのか)などをより深く聞いてみたいと思いました。

移植した脱細胞化腎臓に、腎臓を構成する腎臓の細胞が再生することを示した重要な研究です。今回候補となった論文の中でもデータ数が多く、豚を用いた移植実験であることから手技的にも難しく大変な仕事だったと思います。しかし、機能的な解析が少なく、また血流や尿排出経路の導通が弱かったことから予備的な段階の研究と感じました。

方法に記載がある通り、基本的には慶應義塾大学で行われた実験ですので、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@?獣医学部のベスト論文としてはやや難しいかなと思います。そのため順位はつけておりません。

 ブタにおいて脱細胞化腎臓を一部が切除された腎臓に移植することで、細胞化が進み、機能的になる事を証明している論文でした。X線を使ったin vivoイメージングから組織学的な解析、次世代シーケンサーの解析まで厚みのある研究結果でした。ラットにおいて同様の結果が示されており、また、他の臓器においても同様な報告があるので、ヒト医療を見据えブタを用いたところが重要なのだと感じました。ヒト医療を考えるとある種マイルストーンになると思われます。

本論文はブタの腎臓に腎臓から得られた脱細胞化細胞外マトリクスを移植することで細胞外マトリクス内で腎再生が誘導することを明らかにしています。

インパクトが高い腎臓の再生医療という分野において、細胞外マトリクス移植の生体評価を行った本論文は非常に貴重であると思います。今回の研究では細胞外マトリクス内の細胞と構造、血流評価でしたが、これが腎機能評価にどのようにつなげていくかも興味があります。

インパクト、今後の発展性という点を踏まえて、ベスト論文の候補として推薦します。

ブタの腎臓部分切除モデルを用いて、腎臓由来細胞外基質が腎再生を誘導することを、形態的?機能的に明らかにした論文。腎疾患治療において透析や腎移植とは異なる新たな選択肢を与えるとともに、このような器官由来細胞外基質の臓器再生における有効性をブタを用いて示している点でインパクトが大きいと感じました。他の候補論文いずれも素晴らしいものでしたが、実験方法から結果まで最もインパクトを感じたので1位にさせていただきました。

本研究は、医学、獣医学で応用が強く期待される腎臓のネフロン再生の新技術に関する研究で、より人に近いモデルとしてミニブタ?を用い、ブタ腎臓由来の細胞外マトリックスの移植によるネフロン再生を実証しています。医療?獣医療分野のどちらでも重要な問題となっている腎不全治療に光明が指す最先端技術であり極めてインパクトが強く、また、医工獣連携のハイレベルの研究になっています。

示されている写真の組織像の差がよくわからなかったのと、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@としての貢献がどの程度あるのかが気にはなりましたが、腎臓由来細胞外マトリックスによる腎組織の再生、臨床への応用など、臓器移植、再生医学領域への貢献が大きい論文と思われました。

本研究は,これまで再生しない臓器として考えられていた腎臓のネフロンが,脱細胞化した腎臓骨格の内部においては再生可能であることを示した.腎臓骨格が自己再生や修復を誘導する様々なシグナル分子を含むことは大変興味深く,さらなるメカニズムの解明が期待される.

細胞外マトリックスを用いた再生医療への応用を示した論文で、獣医学領域だけでなく、医学領域にも大きな意義を持つ研究だと思った。

再生医療の前臨床モデルとして、豚において腎臓を脱細胞化し、その構造体を移植し、腎臓再生を観察した。機能的なネフロンの再生が誘導されており、非常にインパクトのある研究である。

データ量、掲載ジャーナルのレベル共に高い。再生医療の研究という面で獣医学部で広く関心を集める事は想像に難くない。

ネフロンの再生を明らかにしたことは興味深い。再生のための気質の作成方法のコツなど、いろいろ質疑が活発になる印象がある。

脱細胞化腎臓による、豚を用いた腎臓再生に関する論文。再生しないとされる腎臓の再生に関する新しい知見を示している。

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