第449回獣医学科セミナー<ベスト論文2020>「壊死性軟部組織感染症起因菌の走化性の役割」演者:山﨑 浩平先生(公衆衛生学研究室)

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2021-04-23
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17:00
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A棟3階 A31講義室

イベントの概要

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壊死性軟部組織感染症起因菌の走化性の役割

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演者?

山﨑 浩平 先生(公衆衛生学研究室)

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セミナー内容(要約)?

Vibrio vulnificusは、ヒトに感染後、短時間内に皮膚や筋肉などの軟部組織を壊死させ、敗血症により死に至らしめます。この特徴から、ヒト喰いバクテリアとして恐れられています。本菌感染症における最も大きな問題は、感染者体内におけるV. vulnificusの増殖速度があまりに早いため、抗生物質による殺菌(治療)が追い付かないことです。本感染症の致死率は、現在でも50~70%と高いままです。
?獣医公衆衛生学研究室ではV. vulnificus感染症の新規治療法の開発を最終目標とし、生体内におけるV. vulnificusの増殖戦略の解明を行っています。今回、ベスト論文に選出していただいた発見は、V. vulnificusが感染後、直ちに皮下組織から筋肉組織深部へと向かう化学走化性を発揮し、この能力により宿主の免疫から逃れることで生体内における短時間内での増殖を可能にしているというものです。本研究により、V. vulnificusが感染者体内において、素早く増殖できるメカニズムのひとつを明らかにすることが出来ました。今後もこのような研究を積み重ね、抗生物質に依存しない、あるいは、併用可能な本感染症の新規治療法の開発につなげて行きたいと考えています。
?本セミナーでは、研究成果の詳細に加え、後に得られた最新の解析結果についてもご紹介できればと思います。

【選出理由】
本論文では様々な細菌において病原性に関与する走化性、運動性に関わる分子がVibrio vulnificusの軟部組織深部への侵入に必要な事を証明しています。研究のコンセプトはオーソドックスですが、それを証明する手法が多角的で丁寧でした。さらに、ミスセンス変異を導入することで、タンブル運動を主に行う変異体を得て解析することも興味深かったです。
獣医学科セミナー委員会として、この様な論理的な論文は他の教員や学生に見本となる研究であると考え、ベスト論文2020に選出いたしました。第451回獣医学科セミナーを以下のように開催いたします。教職員および学生のご参加をお待ち申し上げます。