今年度４月より健康科学単位に着任しました板橋クリストファーマリオです。父がスウェーデンで長く生活していたため、外国でも暮らしやすいようにと名付けられました。

私は24歳からの６年間、プロテニスプレーヤーとして活動しました。「生活の全てを賭けてテニスに取り組んだら、どれだけ上手くなれるのかを知りたい」という意気込みで飛び込んだ世界でしたがトーナメントでは優勝者以外は負けて終わるため、辛かった思い出の方が多いかもしれません。しかしながら、負けた試合の中から自分の良かったところを見つけ、自らを励まし、次の大会へ向けて練習に取り組む日々からはテニスの技術以外にもたくさんのことを学びました。また、試合会場では練習相手を探すために初対面の人に声をかけることが多々ありましたが、こうした体験を通じてコミュニケーション力を養うことができたと思います。授業では、私がこれまでの経験で得たことも学生たちに伝えていきたいと考えています。

そして、現役引退後は指導者としてテニスに携わり、これまでに約１万人の愛好家にテニスの楽しさや上手くなる方法、試合で勝つための方法などについて伝えてきましたが、こうした中で生じた疑問を研究テーマとしてきました。

例えば、テニスの試合では「過去の結果に一喜一憂せず、目の前のポイントに集中すること」が重要であるとされています。そこで、テニス史上最高のプレーヤーともいわれるジョコビッチ選手と日本のエース錦織選手を対象として、直前のポイントでの得失点の結果と次のポイントでの得失点の結果の関連性について分析を行ったところ、両選手ともに関連性は低かった（直前の結果が次の結果に影響していない）ものの、その傾向はジョコビッチ選手の方が顕著であることが分かりました。これは近年注目されている「マインドフルネス」にもつながるのではないかと考え（実際にジョコビッチ選手は瞑想をトレーニングに取り入れています）、将来的にはスポーツ選手のみならず多くの人たちのメンタルヘルスに役立つ研究についても行っていきたいと考えています。